富山大学人文学部案内2018
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人間である限りのがれられない問いがある。松能 今日子(まつの きょうこ)さん 人はしばしば、科学によっては答えられないような問題に悩まされます。例えば、存在と認識、倫理と生き方の問題などです。哲学・人間学コースは、そのような人間にとって普遍的な問題をめぐる、さまざまな思想について研究するコースです。ここには「哲学」と「人間学」の二つの教育研究分野が含まれます。哲学分野では、主に世界観、人間存在、認識論、芸術論など、西洋哲学の伝統的主題に取り組み、過去の哲学的思想の理解を踏まえながら、現代を生きるわれわれがどこに向かうべきかを探ります。人間学分野では、西洋および東洋の倫理思想・宗教思想を中心に学ぶほか、社会思想や、生命倫理、ジェンダー(性)、教育などの、現代社会・現代日本をとりまく倫理的諸課題にも取り組みます。 私は高校生の頃から存在や時間といったものに興味があり、1年次に哲学・人間学コースの授業をいくつか受けてみて、このコースに入ることを決めました。決めた理由は、授業がおもしろかったということと、大学で哲学を学ばなければこの先哲学を学べる機会はそうないだろうと思ったからです。 はじめは哲学の知識もほとんど無く、何を勉強すればいいのかも分かりませんでしたが、授業を受けるうちに自分がやりたいことも少しずつ見えてきました。私がいま関心を持っているのは、ドイツ観念論とキリスト教の思想の関係についてです。人文学部には様々なコースがあり、哲学・人間学コースではほとんど全ての時代と地域の思想を取り扱うことができるので、自由に自分の関心を追究できました。 授業では、哲学書をみんなでじっくり読み解いたり、様々な時代と地域の思想を学んだりしています。授業で哲学書を読むときはみんなで意見を出し合いながら読むので、ただ本の内容を理解するだけでなく、自分の考えを分かりやすく伝え、他の人の考えを理解する力も身に付くと思います。●卒業論文に採り上げられた研究テーマ例やりたいことを見つけ、自由に自分の関心を追究できます。哲学・人間学コース思想家たちに学びつつ自分自身で考えよう。「ヒュームの因果論̶経験的な因果概念の起源と本性̶」「フリードリヒ・シラー『カリアス書簡』における美の客観的原理とは何か」「人格と同一性について̶シューメーカーの『自己知と自己同一性』から̶」「アウグスティヌスの『自由意志論』からみる悪について」「現存在における自己の在り方についての一考察」「柳田國男民俗学における伝説の発生と成立̶『一目小僧その他』より̶」●教員の専門分野■哲 学■人間学教 授准教授教 授教 授准教授永井 龍男池田 真治松﨑 一平田畑 真美澤田 哲生アリストテレス、古代ギリシア哲学、自然哲学ライプニッツ、初期近代哲学、数理哲学史アウグスティヌス、教父哲学、中世キリスト教思想日本倫理思想史、倫理学、儒学思想、神道思想現象学、メルロ=ポンティ、フッサール、病理学 専攻した哲学をはじめ、日本史から日本文学まで幅広く学びました。じっくりと腰を据えて書物や参考文献を読み込み、自分の考えをしっかり持つことの重要性に気付くことができました。卒論は、18世紀イギリスの哲学者、ジョージ・バークリの「非物質主義」に取り組みました。 就職にあたっては、県内で頑張る人の活躍を伝えたい、富山県をもっと元気にしたい、と思ったのがきっかけで、県内各地の人・物の動きを取り上げ、各種事業を積極的に行っている北日本新聞社に決めました。実際に仕事をしていく中で、人文学部で学んだ「いろいろな見方や考え方があるということ」「視点を変えて見ることの大切さ」が大きく役に立っています。 読者の方から「いい写真だったね」と言われるとうれしくなります。また、2014年1月に行われた全国高校サッカー選手権大会では、富山第一高校の選手が活躍する姿を撮影するという貴重な体験もできました。何か熱中できるものを見つけ、積極的に取り組んでほしい。船木 悠平(ふなき ゆうへい)さん株式会社 北日本新聞社 2013年卒業■哲 学■人間学田畑 真美(たばた まみ)教授教育研究分野/人間学 哲学・人間学コースの人間学教育研究分野の魅力の一つは、古典を通して先人達との深い対話ができること。古典を読むとは、単なる知のツールの習得ではありません。その著者と深いところで対峙し、語り合うことで、自分という人間にも向き合うことになるし、また自分以外の他者、人間そのものにも向き合うことになります。 もう一つの魅力は、受講生や教員が、物事について自分の意見を分かち合えるところです。ともに同じテキストを読み、同じテーマについて考え、それぞれの受け止め方や解釈のしかたを語り合い、分かち合うことができます。 本に書いてあることや思想家が語ったことを、咀嚼せずに丸呑みせず、立ち止まってじっくり考え、対処できる姿勢と力を身につけてほしいです。また、たえず自分の立ち位置を確認し、できるだけ中立的客観的に真理を探究する姿勢を身につけて欲しいです。自分の世界を狭めることなく、広く深い物の見方・考え方を。可能性、無限大。哲学人間学Professor's Voice教員からのメッセージOB・OGVoice卒業生からのメッセージStudent'sVoice在学生からのメッセージ10

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