心不全治療薬による新しい抗がんメカニズムを解明

 富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)薬物生理学研究室、藤井拓人助教、酒井秀紀教授(薬学部長)らの研究グループは、心不全治療薬として使用されている強心配糖体の抗がんメカニズムを初めて明らかにしました。

これまでの疫学的研究で、ジギトキシンやジゴキシンといった強心配糖体を服用している心不全患者が、がんを発症した場合に、がんの悪性度が低いこと、がんの再発率が低下すること、患者の5年生存率が高くなることが確認されていました。そのため、強心配糖体の抗がん作用が世界的に注目され、関連する多くの研究がなされていますが、「なぜ強心配糖体が抗がん効果を有するのか?」という根本的な問題、すなわち、強心配糖体の抗がんメカニズムについては不明なままでした。

 藤井、酒井らの研究グループは、このたびの研究で、がん細胞の細胞膜の特別な微小領域(膜マイクロドメイン)に、がん細胞に特異的な「膜輸送タンパク質複合体」が存在していることを発見しました。そして、強心配糖体が、この複合体の「受容体型ナトリウムポンプ」に結合し、「細胞容積調節アニオンチャネル」を異常に活性化し、抗がんシグナルを発生させることを突き止めました。興味深いことに、がん細胞ではない通常の細胞には、このようなメカニズムは存在しないことも確認しました。

 この研究成果は、平成30年9月13日に国際科学誌「BBA-Molecular Basis of Disease」電子版に掲載されました。

プレスリリース [PDF, 543KB]