高齢者の物忘れは、本人の認識は家族より早く 家族が認識するころには認知機能は低下しているため、本人が認識した段階での早めの対応が 早期発見・早期対応につながる

 富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門は、 平成26年に富山県が実施した富山県認知症高齢者実態調査の追加分析を行い、認知症高齢者の早期発見に関する新たな知見を得ましたので公表します。

 富山県認知症高齢者実態調査の対象者は、県内の65歳以上の高齢者から0.5%無作為抽出された1537人のうち、同意の得られた1303人(同意率84.8%)です。そのうち、今回の研究では、家族と同居している663人を対象に、対象者の「物忘れ」の認識と、同居家族による対象者の「物忘れ」の認識の組み合わせと、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)(注)との関連性を評価しました。敦賀市立看護大学の中堀伸枝助教、富山大学の関根道和教授らが分析しました。

 その結果、本人と家族の物忘れの認識の組み合わせとHDS-R得点の平均は、本人の認識はなく家族の認識もない場合は27.0点、本人の認識はあるが家族の認識はない場合は24.9点、本人の認識があり家族の認識もある場合は15.5点、本人の認識はないが家族の認識はある場合は13.0点でした。このことは、本人の物忘れの認識は家族より早く、家族が本人の物忘れに気づいた時には認知機能は低下している場合が多いことを意味しています。本人が物忘れを認識した段階での早めの対応が、認知症の早期発見・早期対応につながる可能性があると考えられます。

 調査結果の詳細は、英国の医学誌BMC Neurologyに掲載されました。高齢者の「物忘れ」を本人と同居家族の視点から研究を行い、認知症高齢者の早期発見の手がかりを明らかにした貴重な研究と考えています。

プレスリリース [PDF, 255KB]