震災から4年を迎えるにあたって シンポジウム「放射線と環境・食の安全」を開催しました

 2015年3月14日(土)、東京大学 弥生講堂 一条ホールにおいて、富山大学 学長裁量経費事業「安心・安全のための放射線研究拠点の形成と大学からの情報発信」、東京大学・農・食の安全研究センター、弘前大学被ばく医療総合研究所の“3大学連携事業”として、「-震災から4年を迎えるにあたって- シンポジウム『放射線と環境・食の安全』」を開催しました。
 最初に、東京大学 食の安全研究センター長 関崎 勉 教授より開会挨拶があり、本シンポジウムの開催趣旨等の説明がありました。次に、富山大学大学院医学薬学研究部(医学)放射線基礎医学講座 近藤 隆 教授が、本シンポジウムの経緯説明と、「放射線の生物作用-コミック誌からの話題」と題して、放射線の間接作用と直接作用との違いを示し、細胞が化学的な復元力を超えた場合に放射線が人体に影響を及ぼすことがあると講演し、「放射線を正しく知ること」が大切であると強調しました。

 続いて第1部では、弘前大学被ばく医療総合研究所放射線生物学部門 吉田 光明 教授が、「放射線と染色体異常 -被ばく事故における線量評価の視点から-」と題して、染色体線量評価法の現状と問題点ならびに対応について、また、浪江町の復興支援、浪江町の子どもたちを対象にした染色体検査について講演しました。引き続き、弘前大学被ばく医療総合研究所放射線化学部門 山田 正俊 教授が、「原発事故により放出された放射性物質の海洋における動態」と題して、放射性物質が海洋および海洋底にどの程度分布しているか、その物理、化学、生物過程を綿密に調査した結果を紹介しました。

 第2部前半では、東京大学大学院農学生命科学研究科国際水産開発学研究室 八木 信行 准教授が 「原発事故が水産業に及ぼした影響」と題して、福島県の水産業の再開の経緯と、震災前と震災後の漁業による水揚げ量の比較、また、今後のビジョンについて講演しました。続いて、東京大学大学院農学生命科学研究科国際情報農学研究室 溝口 勝 教授が「原発事故後における農業再生の試み」と題して、飯舘村で取り組んできた農地除染の現場実験やイネの栽培試験を紹介し、農業再生のために農学分野として取り組むべき課題について講演しました。

 第2部後半では、富山大学大学院理工学研究部地球生命環境科学専攻 丸茂 克美 教授が「農地のカドミウム汚染対策から学ぶ放射能土壌汚染対策」と題して、富山県がイタイイタイ病対策として取り組んできた土壌対策を紹介し、福島原発事故に起因して発生した放射能汚染土壌のうち、水田に関しては、富山県が実施した埋込客土工法や上乗せ客土工法で地下に埋没することが有効であると講演しました。続いて、富山大学水素同位体科学研究センター 鳥養 祐二 准教授が「トリチウムを知る -原発事故におけるトリチウムの影響-」と題して、トリチウムとは何か?に始まり、原子力発電所で発生するトリチウムについて、また、人体への影響、未来のエネルギーへの利用など、トリチウムに関する幅広い知識を紹介し、福島原発の事故で発生した汚染水問題を理解する助けにしてほしいと講演しました。

 最後に、閉会の挨拶として、弘前大学 柏倉 幾郎 理事(副学長)より本シンポジウムの総括があり、今後、大学研究者が「放射線と環境、食の安全」についてどのように検討および協力していけばよいか示唆する提言がありました。
 各講演後には活発な質疑応答が交わされ、シンポジウムは盛会裏に終了しました。
 ご協力賜りました各方面の方々へ厚く御礼申し上げます。

  • 会場風景
  • 富山大学大学院医学薬学研究部(医学) 近藤 隆 教授 
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)
    近藤 隆 教授
  • 富山大学大学院理工学(理学) 丸茂 克美 教授富山大学大学院理工学(理学)
    丸茂 克美 教授
  • 富山大学水素同位体科学研究センター 鳥養 祐二 准教授富山大学水素同位体科学研究センター
    鳥養 祐二 准教授