平成27年度入学式 式辞

式辞

 富山の地にも桜満開の季節がやって参りました。本日、平成27年度入学式において、学部入学生1,930名、大学院入学生394名、総勢2,324名の皆さんを富山大学に迎えることができました。入学生の皆様、ご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。本学教職員、在学生一同を代表し、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。またご来賓や本学ゆかりの皆様方には、ご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。新入生の皆さんの輝かしい表情や、張りつめた雰囲気の中に、私も感激と興奮の気持ちを禁じえません。皆さんへの期待と思いを込め、式辞を述べさせていただきます。

 1990年代以降、自然科学はあらゆる分野で飛躍的に発展し、革新的な技術・情報手段の開発・普及により、世界・社会は過去の歴史とは異質の速さと広がりをもって変貌を遂げてきました。人々は「より高い賢さと便利さ」を求め、それに適合する形で生まれた個別的・異質的な形を是とする新たな資本主義体制が世界の潮流となっています。一方で、資源の枯渇、地球環境の破壊や自然災害、不安定な政治経済状況、格差と貧困、そして少子高齢化など、地球規模での様々な問題が深刻さを増しています。人の生き方、考え方、価値観も変化してきました。日本人の特徴とも言える個人の勤勉さや平均的能力の高さのみでは、世界の潮流に対抗することは難しくなっています。しかし同時に、日本人の持つ人間力や技術力に対する世界の信頼、期待は、以前にも増して大きなものとなっています。
 このような混沌とした時代の中、20年、30年先の世界、日本を作り、歴史を担うのは、まさに新しい時代に生まれ、新しい感性を持って成長してきた、皆さん方の世代です。皆さんにかかる社会の期待は、皆さん自身が思う以上に大きく、重いものであることを忘れないでください。

 今皆さんは、富山大学生として大学院生として、人生の新たなスタートラインに立っています。大学で何を学び、何をなすのか、人としての心、生き方が問われています。私は、大学生活、研究生活のなかで、皆さんが自己の確立をめざし、悔いのない時間を送られることを強く願います。そのために心がけてほしいことを2点申し上げます。
 第1は将来ビジョンの確立に向け、大いに考え、悩み、そして実現に向けた自分磨きと挑戦を続けて欲しいということです。学業においては、インターネットなど容易に触れることのできる知識や情報媒体のみに頼るのではなく、書を読み、歴史背景や基本的知識を理解し、事象の現場を見聞し、自身の感性で考え、独自の知見を模索する取り組みを継続してください。他人にはない自分だけの答えを探してください。サークル、ボランティア、アルバイト等、学業以外の活動も経験し、「よく学び、よく遊べ」を実践してください。私は、「遊び」の中にある能動的思考、アナログ的要素こそが、人としての感性を育み、新しい自己発見に繋がると思っています。大学時代は、人生の中で、自身がコントロールできる時間や機会が最も多く、失敗や間違いを恐れる事もなく挑戦できるチャンスの時代です。これまでやったことがない、これまではできなかった、自分にはとても無理と思うようなところにこそ、あなたの人生への新たな可能性や喜びが待ち受けているかもしれません。
 第2の点は、人として厳しさと優しさを併せ持つ自己を確立して欲しいということです。人は、一人だけで生きていくことはできません。人としての真摯さ、優しさを持ち、人との直接の語らいや触れ合いを大切にしてください。人の話を良く聞き、人の気持ちを受け入れ、同時に自身の思いを相手に伝え、互いに理解しあうための対話を交わしてください。メールの言葉のみに頼るのではなく、直接に人と向き合い、目の動きや息づかい、仕草のなかに互いの思いを感じあってください。皆さんの周りには、いつも多くの友人、先輩・後輩、そして教職員がいます。様々な人とのふれあいの中で、良き師、良き友との出会いがあったなら、それは大きな幸せであり、人生の宝物となることでしょう。

 現在国立大学においても「大学は何のためにあるのか」「教職員、学生は大学で何をすべきなのか」など大学の根幹に関わる課題が問われています。特に大学大衆化の進む昨今は、実用的知識や技術習得優先を望む社会・企業の要請が強くなっています。そのような現実はありますが、私は、やはり「大学は人物養成と学術研究の場であり、知の探求を知の応用に広げていくことが真の役割」でなければならぬと考えています。富山大学は、2005年、異なる歴史と伝統を持つ旧富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学が再編・統合し、全国有数規模の総合国立大学として新しい歴史を刻み、本年10月1日に10周年を迎えます。8学部に1研究所・附属病院を加えた10部局に、約1万名の学生が学び、また富山県内外や世界で、8万人を超える同窓の皆さんが多様な領域で活躍されています。大学を取り巻く環境に厳しさはありますが、本学のスケールメリットを活かした強み・特色を伸ばしながら、発展を続ける努力を重ねてまいります。
 富山県は、3,000メートル級の立山連峰から富山湾まで、美しさとダイナミックさを凝集した豊かな自然と、日本一の水資源に支えられた農林水産資源に恵まれ、また大伴家持の万葉文学以来の文化・教育の歴史・伝統、江戸時代からの薬業や伝統産業を基盤に発展した多彩な産業活動等、他の地域にはみられない特色と豊かさに溢れる県です。去る3月14日には北陸新幹線が開通し、首都圏および関西・中京圏を結ぶ日本海側の拠点として、富山は新たな時代を迎えようとしています。

 このような時期に皆さんが富山大学で学ぶこと、何かのご縁でありましょう。皆さんが充実した学生生活を送られるよう、我々教職員も全力で皆さんを支援することをお約束し、式辞と致します。

平成27年4月8日
富山大学長 遠藤 俊郎