平成27年度学位記授与式 学長告辞

告辞

 本日、学部卒業生1,786名、大学院修士課程修了生343名、博士課程修了生48名、論文博士7名、合計2,184名に学位記を授与致しました。この中には、67名の留学生の方が含まれています。卒業生・修了生の皆さん、そして学生諸君を支えてこられたご両親やご家族の皆様、ご卒業、誠におめでとうございます。また卒業生、修了生の門出を祝福するため、ご多忙にも関わらずご臨席を賜わりましたご来賓の方々や本学ゆかりの皆様方には、厚く御礼申し上げます。
 2,000名を超える若人が、富山大学から、それぞれの道に巣立つこの良き日を迎えることができること、私ども教職員にとっても大きな喜び、感激であります。富山大学を代表し、心からお祝い申し上げます。皆さんの今後の活躍と、輝く未来への期待を込め、告辞を述べさせていただきます。

 皆さんは、新しい変化の時代に生まれ、生き、そして未来を担います。科学技術や情報手段の進歩・普及により、世界規模で急速に広がる社会・経済構造変革の中で、人々はこれまでとは全く別次元の物質的豊かさや便利さに溢れる生活を享受しています。人としての考え方や生き方にも、新たな価値観や多様な形態が生まれています。時代変化の必然ともいえる現状ではありますが、その変化の激しさ故に、人がこれまで歴史・文化としてつくり上げてきた既存の概念や行動様式との間には、様々な軋轢や混乱も生まれています。特に、世界の国々の距離感と時間軸が急速に狭まる中、異なる宗教理念や地域較差が生みだす問題は、これまでの歴史にはなかった激しさと複雑さで拡大しています。さらに、温暖化や相次ぐ大規模な自然災害など、人類の将来を危うくする地球規模での環境問題も顕在化しています。5年前に発生し、今もなお多くの課題を残す東日本大震災、特に原子力発電所災害は、まさに進歩する科学技術の持つ負の側面であり、我々日本人が決して忘れてはならない事実であります。
 問題を真摯に受け止め、解決しながら新たな進歩と発展を生み出すこと、それが将来を担う皆さんの責務であり、社会からの期待であります。この場に集う卒業生、修了生の皆さんは、富山大学において学生生活を共にした仲間達です。これまでに大学で身に付けた知識・技能・経験を糧に、一人の専門的職業人・プロフェッショナルとして、仲間と共に社会へ大きく踏み出してください。厳しく解決しがたいような問題に直面した時は、今こそが自身を成長させるチャンスの時と考え、正面から対峙し、辛抱強く、励み、行動してください。皆さんは、他の地域にはない豊かな自然・文化・産業に恵まれた富山で、学生生活を送られました。苦しい時は、日々その姿を変えながら、いつも私達の心に何かを呼びかけてくれる立山連峰の山並みと、それを乗り越えて行く皆さん自身の姿を思い描き、元気を生み出してください。

 混沌の時代だからこそ、自分の選んだ道で、自己のためにではなく、他人ため、社会のために貢献し、責務を果してください。プロフェッショナルとして成長を果すため、大切にしていただきたいことを2点あげます。

 第1は、個の自立と「学び」「遊び」の意味についてです。
 「学ぶ」の言葉には、「習う」あるいは「学習する」とは異なり、自らの力で研究・調査し学問に挑むという、主体的かつ人間的な営みを示す意味が込められています。また「学ぶ」の言葉は「まねぶ」に由来し、「真似る」と同じ語源ともいわれています。新しい活動の場においても、まずは上司や先輩を真似し、そこに何かを学び、つかみ取り、新たな自己を見出して行ってください。
 一方「遊び」については、その原点について、「知能を有する動物が、生活的・生存上の実利の有無を問わず、心を満足させることを主たる目的とし、自らが望んで行う行動」と記されています。人にとっての遊びは、長い人生の中でそれを行う者には充足感やストレスの解消、安らぎや高揚など様々な利益をもたらします。しかし他者に対しては、何らの影響や束縛をもたらすことはありません。私は「遊び」の中にこそ、人それぞれが育む個人としての文化があると考えています。
 良き「学び」、良き「遊び」は、日々の生活のなかで相反する存在ではなく、共に、人の自立と成長を育み、人生の豊かな成熟を生み出す基盤です。社会人として、学生時代にも増して、「よく学び、よく遊び」、大いなる自立を果たしてください。

 第2は、「人との結びつき、人との連携」の大切さについてです。
 コンピューター技術は、既知の情報を集積・分析し、正確な答えを導くことには絶大な能力を示します。一方、複数の領域の異質のデータを総合し、新たな答えを探し出すイノベーション力については限界があります。現状では、インターネットや人工頭脳がどんなに進歩しても、機械が人の能力のすべてを越えることはまだまだ先のことのように思えます。しかし、科学技術の進歩と反比例して、人が人と直接出会う機会が減り、かわす情感も希薄となり、人としての能力、即ち人間力が失われつつあるとの危惧は、急速に高まっています。人が人としての能力・魅力を発揮し、豊かな気持ちで生きていく鍵は、正に人と人との結びつき、連携の中にこそ生まれます。
 また人は一人だけで生きていくことはできません。皆さんは、新しい環境においても、是非人との出会い、ふれあいを大切に育んでください。バーチャルの世界ではなく、現実に目と目を合わせて語らい、互いの心の動きを感じあい、理解・信頼の関係をつくり上げてください。人との結びつき、連携の中で生まれる、個の力を集約できる総合力、それこそが機械には決して真似のできない人の力です。

 変化していく社会の中で、国立大学への期待はあらゆる分野で益々高まっています。昨年、再編・統合から10周年を迎えた富山大学においても、世界に向け新しい業績や情報を発信し、同時に地元に貢献する知財・人材を育てる「知の拠点」として、その役割を果たすことが強く求められています。皆さんにとって誇れる母校として発展できるよう、教職員とともに努力してまいりますので、これからも同窓生として母校富山大学を見守り、発展のためのご意見ご支援を寄せください。
 最後に、皆さんに「命をつなぎ、幸せをつなぐ」という言葉を送ります。世界の将来について話をしていた時、若い職員がふと漏らした一言です。誰もが幸せに暮らす平和な世を願うとともに、皆さんが、これから先さらに素晴らしき人生を送られることを祈念し、学長告辞と致します。

平成28年3月23日
富山大学長 遠藤 俊郎