平成28年度入学式 式辞

式辞

 桜が早くも満開となり、春の暖かさを感じる季節となりました。本日、平成28年度入学式において、学部入学生1,942名、大学院入学生459名、総勢2,401名の皆さんを富山大学に迎えることができました。入学生の皆さん、ご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。入学式が無事挙行でき、張り詰めた空気の中で、新入生の皆さんの輝かしい表情に出会えること、私ども大学人にとって、年は変わっても常に変わることない、新しい喜び、感激であります。教職員及び在学生一同を代表し、心よりお祝いを申し上げます。また、ご来賓や本学ゆかりの皆様方には、ご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。

 皆さんが生きる21世紀は、人類既存の文化・文明の歴史に、大きな転換がもたらされようとしている時代です。進化する科学・コンピュータ技術は、計算や、知識・情報の収集・分析、さらには均一で精密性の高いものづくりなど、様々な分野で人間の能力を凌駕しています。人々の生き方や価値観すらも大きく変わろうとしています。人は「より大きな便利さと豊かさ」を求め、それに適合する形で個別的・異質的な形を是とする社会・経済体制を生み出してきました。これに伴い、多様性・柔軟性・寛容性などといった人としての力は次第に弱いものとなっています。地球規模での環境破壊や自然災害、不安定な政治経済状況、格差と貧困、少子化など、多くの問題も発生し、深刻さが増しています。今人類には、自身が作りだした自己を越える力を如何に制御し、共存し、新たな世界を作り出すことができるのか、それが問われています。そのような中で、これからの日本、世界を背負うのが、新しい時代に生まれ、新しい感性を持って成長してきた皆さんです。18歳選挙権の実施に見られるように、皆さんにかかる社会の期待は、大きく、重いものとなっています。
 皆さんを迎える富山大学は、全国国立大学の中で、唯一、異なる歴史と伝統をもつ3大学が再編・統合し、新しい時代が求める新しい総合大学として誕生しました。昨年10月1日に統合10周年の節目を迎え、地域と世界に向かって開かれた大学としてさらなる発展を目指し、新たな歩みを続けています。現在は8つの学部に1研究所及び附属病院を加えた10部局に、約1万名の学生・研究生が学んでいます。この4月からは、教職大学院が新設されました。また10万人に近い同窓生が、県内外をはじめ世界各地で活躍しています。皆さんは、今富山大学生として大学院生として、人生の新たなスタートラインに立っています。大学で何を学び、何をなすのか、人としての心意気、行動が問われています。混沌の時代だからこそ、自己の確立をめざし、賢く、たくましく生き抜く力を身につけて下さい。そのために心がけて欲しいことを2点申し上げます。

 第1は、大学に通い、学ぶことの意義と幸せを胸に刻みながら、将来に向けた研鑽と挑戦の学生生活を送っていただきたいということです。
 現在、大学への進学率が50%を越え、大学の大衆化が進む中で、社会・国家は大学に対し常に新たな対応と改革を求めています。特に国家予算の配分が多く、学生諸君もその恩恵を受ける国立大学への要求は、より厳しいものとなっています。富山大学は、このような難しい状況を逆にチャンスの時ととらえ、新たな教育・研究の発展に向けた挑戦を続ける中で、みなさんを迎えています。
 私は、「大学とは、知の探求を知の応用に拡げることを役割とする、人材育成と学術研究の場である」と考えています。また古来、大学Universityとは、教職員と学生が一体となって構成する教育組織であったと言われています。大学教育の再生は国家再生の基盤であり、我々はその役割を果たすため真っ向から取り組んでいかねばなりません。みなさんの基本的な学生生活の形が変わることはありませんが、今の時代だからできる、これまでにない文化・文明の融合が生み出す新しい大学作りに、みなさんの若い力を役立てて欲しいと思っています。また皆さんには、学業だけではなく、課外活動などの学生時代の様々な経験において、常に安全策を求めるのではなく、リスクに挑戦する心を持ち続けて欲しいと思います。リスクと向き合うためには、大きな努力とエネルギーが必要です。若さと自分でコントロールできる時間を持てる学生時代こそが、人生の中でそのエネルギーを最大に発揮できる時です。
 人生で何を大切にし、将来に向けて繋いでいくのか、考え、行動し、そして答えを見つけてください。

 第2は、人とのつながりを大切にしてほしいということです。インターネットやSNSは、距離や時間を容易に超える新しい人のつながりを生み出しました。一方で、人と人とが直接触れ合う機会が減り、交わす情感も希薄となっていることへの危惧が高まっています。また今後あなたが、人工頭脳に負けない仕事を持ち、続けていくためには、①創造性(creativity)、②マネージメント力、③ホスピタリティー、の3条件が必要とされています。
 人は人と触れ合わずして、一人で生きていくことはできません。一人の人間として自立性を高めるとともに、互いに支え合う心、やさしさを大切にしてください。バーチャルの世界ではなく、現実に目と目を合わせて語り合い、互いの心の動きを感じ合い、かけがえのない仲間を得てください。皆さんの周りには、いつも多くの友人、先輩・後輩、そして教員、職員がいます。富山大学で良き師、良き友との出会いがあったなら、それは大きな幸せであり、人生の宝物となることでしょう。

 大学生活の4年間、6年間は、決して長い時間ではありません。卒業を迎えた時に「1年生のあの時にこれをしておけば良かった」などと悔いを残さぬよう、入学式のこの日からスタートダッシュしてください。1日1日を大切にして、全力で駆け抜けてください。みなさんが充実した学生生活を送られるよう、我々教職員も全力で皆さんを支援することをお約束し、式辞といたします。

平成28年4月7日
富山大学長 遠藤 俊郎