富山大学人文学部案内2018
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16●卒業論文に採り上げられた研究テーマ例伊藤 智樹(いとう ともき)准教授教育研究分野/社会学 私は現在、被災地の博物館施設で学芸員をしています。地域の歴史や文化を研究し、人々に伝えることが仕事です。 私は学生時代には文化人類学分野を専攻し、県内各地に足を運んで地域住民に話を聞いたり、彼らと共に地域行事に参加したりして、伝統文化や地域社会の課題について、内側から考えるという手法の研究をしていました。その中で地域文化やそれを取り巻く人々との交流の魅力にとりつかれ、人に迷惑をかけて後悔することもあり、迷いもしましたが、現在の職業を選びました。 私は、震災という経験を完全に共有することはできずとも同じ目線で共感し、地域の「これまで(歴史や文化)」を通して共に地域の「これから」を作るお手伝いをしたい、と考えて仕事をしています。この視点を持つことが出来たのは、富山大学における経験があったからに他なりません。 人文学部は、学んだことが私のように職業に直結することは少ないかもしれませんが、人について深く考えるには最適な環境です。仕事に直結する知識やスキルは、裏を返せば仕事の中でしか活かすことができないとも言えます。一方、我々の人生において、人や社会との関わり合いは、生涯続きます。人文学部で学び獲得した人脈、視点、考え方、想像力は、皆さんの人生を豊かにすることでしょう。大学生活ではたくさんの発見や出会いが、皆さんを待っています。受験勉強を頑張り、ぜひ広い世界に飛び込んできて下さい。 社会学研究者は、それぞれが自分のテーマを持っています。一口に「社会」といっても、さまざまな切り口があるので、その中で特に詳しく調べて深く考えたいことを選ぶのです。私の場合、病いや障害を持っても生きやすい社会に近づくために、病いや障害を持つ人同士による支えあい(ピア・サポート)の力を活かした支援のあり方をテーマにしています。 社会学を学ぶ学生も、私とは異なったテーマを、関心のある社会現象から見つけていきます。そして、インタヴューやアンケート、メディア分析、フィールドワークなど「社会調査」の方法を用いて、それらの社会現象について細かく調べ、分析し、深く考察します。その成果である卒業論文は、インターネットでも公開しています。 社会学に限らず社会文化コースの各分野は、それぞれの個性的な知的伝統を背景として持っていますが、大学の外に出て、社会・文化を調査して深く考察するという点では、共通しています。これまで学んだ知識に満足せず、もっと社会・文化について知りたいという思いの強い人ほど満足してもらえるカリキュラムを用意して、意欲的な学生を待っています。豊かな人生を送る知恵を身に付けよう。社会調査を通して社会を学ぼう。萱岡 雅光(かやおか まさみつ)さんリアス・アーク美術館(宮城県気仙沼市) 2012年卒業■国際関係論■社会学「アニメは日本と世界を結ぶのか̶その可能性と限界」「フランスにおけるスカーフ論 ̶2004年宗教的標章法を中心に」「希望格差の背景にあるものとは ̶大学生対象の質問紙調査分析」「男性の育児休業に関する最前線 ̶育児・介護休業法改正と現実のギャップ」■人文地理学■文化人類学「富山県砺波市の公共交通のアクセシビリティ- ̶バス交通を中心として」「発展途上国山岳地における観光化の要因とその変化 ̶ネパール・ナムチェバザールを事例に」「現代における祭礼と住民のかかわり ̶富山県黒部市生地の事例から」「地域に根付く伝統文化の存続̶おわら風の盆を事例に」富山大学 人文学部案内 2018Professor's Voice教員からのメッセージOB・OGVoice卒業生からのメッセージ

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