富山大学医学部案内2021
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病める個人における健康水準の向上を目指す医学であるのに対して,社会医学は各種の社会資源と連携して社会全体の健康水準の向上を目指す医学です。具体的には,疫学,予防医学,医学統計学,公衆衛生学,救急・災害医学,病院経営学,法医学などを講義と実習形式で学修します。社会医学は,地域社会との密接な連携や協働によって成立していることから,行政機関や医師会,地域病院等の協力も得て,日本全体や富山県における保健・医療・福祉・介護のシステムやその連携を体系的に理解します。これらの学修を通じて,地域の実情にあった保健医療の実践に必要な知識と技術を修得します。診療参加型臨床実習(4年次後期~)診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)とは,学生が診療チームの一員として指導医の指導・監視のもとに知識,技術,態度を修得する実習法のことです。そのため,臨床実習を行えるだけの十分な知識,技術,態度を修得しているかを全国共用試験(コンピュータによる試験(CBT)と客観的臨床能力試験(OSCE))によって評価します。合格すると,スチューデント・ドクターの称号が与えられ,臨床実習に参加することができます。臨床実習では,富山大学附属病院の全診療科をローテーションする実習に加えて,選択制の実習として学外病院や海外病院での実習を行います。学外病院の例としては,富山県立中央病院,富山市民病院,高岡市民病院,富山赤十字病院,富山県済生会富山病院,厚生連高岡病院などがあります。海外病院の例としては,ボストン小児病院(米国),トロント大学(カナダ),カーディフ大学(英国),リヨン大学(フランス),ルール大学(ドイツ),忠南大学(韓国)などがあります。これらの実習を通じて,地域と世界に貢献する医師としての能力(コンピテンシー)を修得します。そして,6年次後半に実施される卒業試験に合格すると卒業が内定し,医師国家試験に合格すると医師免許が授与されます。研究教育(1年次~6年次)医師は,患者さんの診療にあたり,信頼できる情報や研究成果をもとに最善の医療を行うことが求められます。それを「科学的根拠にもとづいた医療(EBM)」とよびます。したがって,医師には医学者としての素養も求められるといえます。本学では3年次前期に,学生が希望する基礎医学,臨床医学,社会医学の講座に所属して1ヶ月間研究を学ぶ「研究室配属」とよばれる研究教育が実施されています。そこで,文献講読,データの収集や分析,研究発表までの科学研究の一連のプロセスを学修します。さらに研究志向の強い学生のために「研究医養成プログラム」という在学中最大6年間の研究室に所属して研究できる制度があります。実際,プログラムの学生が国内外で学会発表や論文公表をしています。また,研究医養成プログラムの修了者が本学の大学院博士課程(4年制)に進学した場合,一定の要件を満たすと3年間で博士号が取得できます。充実した学修環境により医師免許取得を支援医学科の修業年限は6年であり,絶えない向上心と継続した学修が不可欠です。そのため,学生を支援する様々な環境を整えています。たとえば,医学部のある杉谷キャンパスの図書館は24時間利用可能であり,多くの学生が図書館で日夜勉学に励んでいます。また,学生を構成員とする「カリキュラム委員会」が存在し,カリキュラムなどについて教員と話し合って教育を改善する仕組みがあります。また,「医師キャリアパス創造センター」では,大学の事務組織と連携・協働してカリキュラム全般の管理・運営を行うとともに,入学時から卒業時までの各種データの収集や分析を通じて教育の改善に取り組んでいます。様々な仕組みによって充実した学修環境をつくりだし,学生の医師免許取得を支援しているのが,本学の医学教育の特徴といえます。❶スチューデント・ドクター認定証授与式❷シミュレーション機器を用いた診断学実習❸学生による病院経営をテーマとした学会発表❹「研究医養成プログラム」の学生の研究が国際誌JournalofEpidemiologyに掲載13247

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