薬学部案内2016
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富山流『くすりのスペシャリスト』である本学薬学部卒業生は、いずれもそれぞれの職場で、その「研究者魂」をいかんなく発揮し、高い評価を受けて活躍しています。福地 守(H13卒業・H15修士・H18博士)富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)助教 私は富山医科薬科大学(現在の富山大学)で学位を取得後、縁あって所属研究室の教員となり、研究と教育を行っています。 私は生命活動に必須のイベントである遺伝子発現(遺伝子の情報が機能的な因子に変換される過程)に着目し、特に脳・神経系の発達や機能に遺伝子発現がどのように関わるのか?主に生化学的・分子生物学的手法を用いて研究を進めています。また、薬剤等を用いて遺伝子発現をコントロールすることで、低下した脳・神経機能を改善することが可能ではないかと考え、創薬を目指したアプローチも行っています。私達の生命活動を可能にしている細胞内のメカニズムは非常に複雑で緻密です。研究室スタッフの先生方や学生達と日々の研究を通してこの生命活動の偉大さに驚きながら学ぶ毎日です。 この数年で薬学部の環境は大きく変化し、研究室での研究体制も以前と比較して変わりました。しかし、同じ目標に向かって研究室員が一丸となって研究する心は変わりません。基礎研究を通して生命活動の偉大さを学ぶ21富山流「くすりのスペシャリスト」へのインタビュー鍜冶 利幸(S58卒業・S60修士・S63博士)東京理科大学薬学部教授 私は東京理科大学薬学部で教員として働いています。教育と研究が私の仕事です。薬学をめぐる環境は、大きく変わりました。主に薬と向き合っていた薬剤師は、人と積極的に接することも強く求められるようになりました。薬学研究者も、臨床や病理にリンクした基礎研究を期待されています。 私の研究領域は、疾病予防と健康増進を目的とする衛生薬学です。薬による治療を直接の目的としない、異色な薬学です。私は、人の健康と環境の接点が生体分子と環境化学物質の相互作用にあるという視点から、時代の要請に応えるべく薬剤師養成教育と薬学研究を進めています。 富山大学薬学部の先生方は、研究にも教育にも非常に熱心です。伝統と言っていいでしょう。また、杉谷キャンパスでは、素晴らしい環境に、薬学・和漢研・医学・附属病院が併設されています。領域を超えた交流経験は今でも私の最大の財産です。自分の学生時代を折に触れて思い出しながら、研究室スタッフや学生と活発な日々を送っています。環境と健康の接点を教育・研究する五十里 彰(H6卒業・H8修士・H11博士)岐阜薬科大学薬学部教授 私は富山で生まれ育ち、富山医科薬科大学(現在の富山大学)で学位を取得後、静岡県立大学薬学部の教員になりました。薬学部に入学した頃は、薬剤師の道しか知らず、製薬企業、大学、研究所、行政機関など、多くの活躍の場があることを知って進路に迷うこともありましたが、熱心にご指導いただいた先生方の姿を見て、研究を続けたい思いと薬学教育に携わりたい思いが強くなり、大学教員としての道を選びました。 現在、私は岐阜薬科大学の生化学研究室で、がんの新しい治療標的の同定と治療薬の開発を目指して研究に取り組んでいます。大学では、すぐには役に立たないような基礎研究から医療現場に密着した臨床研究まで、幅広い研究を実施することが可能です。なかなか期待する結果が得られませんが、思いがけない発見に遭遇することがあります。このように探しているものとは別の価値あるものを見つける能力を“セレンディピティ”と呼びます。セレンディピティを高めるためには、幅広い知識と経験が必要なため、学生とともに日々勉強の毎日です。薬学を志す皆さんがこれからどのような職業を選ぶにしても、失敗を恐れず新しいことに挑戦し、多くの経験を積んで欲しいと思います。大学で学生と共に新薬開発を目指す清水 久夫(H15卒業・H17修士・H20博士)武田薬品工業株式会社医薬研究本部 私は製薬企業で研究職として働いています。現在勤務している製薬企業では、画期的新薬を患者さんに届けるという共通の目標のもと、グローバル規模で新薬の研究開発に取り組んでいます。新薬の開発は、ターゲット探索、化学合成、薬効評価、毒性評価、薬物動態評価、製剤設計、そして臨床試験と多くの時間と労力がかかる非常に困難なミッションです。私はその中でも薬物動態を評価する研究に従事しており、現在、主に血中の薬物濃度を分析する仕事に携わっています。研究所では日々新しい候補化合物が見出されますが、候補化合物は低分子化合物から核酸・ペプチドなどの高分子化合物まで多岐に渡ります。さらに薬物本体のみならず代謝物やバイオマーカー等も高感度に分析することが求められます。私はそれら化合物の特性を見極めた分析法を開発することで、新薬の開発に貢献するやりがいを感じています。私は学部・大学院を通して富山大学で学びましたが、社会に出た現在、大学で得た専門知識や経験が自分の科学者としての重要な土台になっていると実感しています。製薬企業で研究職として働く

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