富山大学薬学部案内 2018
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栗林 亮佑(H15卒業・H17修士・H28博士)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ジェネリック医薬品等審査部私は、現在、後発医薬品の承認審査業務と国際業務に携わっています。後発医薬品の審査では、製薬企業が提出する品質と生物学的同等性試験の結果が主な審査内容になります。品質の審査では、後発医薬品の作り方(製造方法)の確認から、製造された医薬品が予め設定された管理項目(規格)に適合するかについて審査を行っています。また、生物学的同等性試験の審査では、先発医薬品と後発医薬品をヒトに投与した時の血中薬物濃度を比較することで、後発医薬品が先発医薬品と同等の有効性及び安全性を有するかどうかを審査しています。国際業務では、医薬品規制調和国際会議(ICH)及び後発医薬品の承認審査における規制協力の促進を図るための国際会議(IGDRP)に参加しています。各国の審査基準、審査方法に関する議論を通して、我が国の医薬品の審査をより効率的にするための方策について考えています。この国際会議での活動を通じて、製薬企業の医薬品開発の効率化を図り、国民の健康増進や医療費の削減につなげられればと考えています。どちらの業務も国民の健康増進につながる仕事であるため、大変やりがいのある仕事であると感じています。加賀谷 賢太(H15卒業・H17修士)田辺三菱製薬株式会社研究本部 私は、「医薬品の創製を通じて、世界の人々の健康に貢献します」との企業理念のもと、世界に通用する新薬を1日でも早く、1人でも多くの患者さんのもとへ届けるべく、研究開発に取り組んでいます。医薬品の創製は十数年の年月と莫大な研究開発費を要し、新薬は多くのステージを経て有効性と安全性が確認され、審査承認を経て発売されます。私はその中で薬理研究に従事しており、ミッションとしては標的分子探索と化合物最適化です。前者は文献や瀬踏み実験等から仮説を設定すると共に医療ニーズ等の情報を付与し狙うべきターゲットの選択を行います。後者は、標的分子の機序に基づき、細胞/組織等を用いるin vitro評価系、 病態モデル動物等を用いるin vivo 評価系で、化合物の作用を検証し新薬として磨き上げる仕事です。いずれもオリジナリティやスピード感、粘り強さが求められますが、非常にやりがいがある仕事です。富山大学で学んだ知識と経験は創薬研究における礎であることは間違いありません。 最後に研究開発の醍醐味を2人の名言で。Imagination is more important than knowledge. -Albert Einstein-Stay hungry, stay foolish. -Steven Paul “Steve” Jobs-審査する行政機関では製薬企業での創薬研究活動山野井 遊(H17卒業・H19修士)株式会社池田模範堂 研究所 薬理グループ 私が働く池田模範堂は立山の麓、上市町と言うところにあります。社名をご存知の方は少ないと思いますが、主力商品の虫刺され用かゆみ止めは商品名を聞けばご存知の方も多いと思います。 このかゆみ止めは昔からある薬ですが、今も研究開発を続け製品の改良や新製品の開発に取り組んでいます。このような研究開発には薬学部で学ぶ幅広い知識がとても役に立ちます。また、研究開発に必要な最新の科学技術を得るため富山大学と共同で研究を行うこともあります。 製薬に携わる人間にとって富山と言う「薬」に力を入れる県にいることは大きなメリットだと思っています。 私自身は県外の出身で本学入学の際に富山に来ましたが、富山の住みやすさからすっかり居着いてしまいました。これから薬について学ぶ方々にとって、「薬都とやま」は良い選択肢となるのではないでしょうか。製薬と富山 私は平成23年度まで、富山県立中央病院薬剤部で病院薬剤師として多様な業務に従事してきました。病院薬剤師は、調剤や注射セットの業務の他、抗がん剤の調製や持参された薬剤の鑑定等を行っています。また、担当病棟を受け持ち、患者さんに服薬指導を行い、適正な薬剤使用に貢献しています。少しでも患者さんが安全に治療を受けられるよう常に努力しています。 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、悲しいことに非常に多くの命が失われました。私は富山県派遣の医療救護班第1班の一員として、3月17日から岩手県の釜石市で医療活動をしてきました。避難所の巡回診療を行うにあたり、私の基本的な活動は、主に調剤や、そのくすりをお渡しする時の服薬指導でした。その際、服薬全体、さらには健康食品などとの総合的な飲み合わせ(相互作用)の確認が重要でした。その他、医師が自分の専門外の薬剤を処方する時にその薬剤の用法・用量を提示したり、避難所の方が持参された薬(またはそれが記載された説明書など)の同効薬・類似薬をこちらで準備した薬の中から探し出し、医師に助言することもありました。 また、持ってこられたお薬が一包化されていた場合には、錠剤に直接刻まれている刻印からどんな薬剤であるかを鑑定すること(薬剤鑑定)もありました。一緒に活動していた医師や看護師から薬に関しての大きな信頼を得られたと思います。最近は特にジェネリック(後発)医薬品の流通が多く、ジェネリック医薬品を普段から扱っている薬剤師が医療班にとって重要な存在になってきていることを実感しました。さらには医療スタッフの一員として環境衛生的な面からの支援も行いました。 今回被災地での活動で必要だったものは、やる気・笑顔・日常業務の経験でした。病院での毎日の業務の中では多くの発見があります。これからも新たな知識や技術を習得し、患者さんの生活のサポートをできるような薬剤師を目指して頑張っていきます。日常業務が社会貢献につながる:東日本大震災医療救護活動の経験をとおして清水 政博(H17卒業・H19修士)富山県厚生部くすり政策課22活動中。体育館の一角で調剤。任務終了後、県庁にて。一番左が清水さん。「ちょっと疲れた顔ですが、充実感でいっぱいでした。」製薬企業の製造職として働く山本 章人(H25卒業・H27修士)アステラスファーマテック株式会社 富山技術センター 私は現在、製薬企業の医薬品製造職として、発酵由来の医薬品(原薬)製造を行っています。「製造職」と聞くと毎回同じ作業というイメージを持つ方がいるかもしれませんが、決して単調な業務ではありません。患者さんのもとへ高品質な製品を確実に提供するために、効率よく製品を製造する生産体制を維持する必要があります。また発酵工程は化学的手法とは異なり、微生物(生き物)を相手にするため、安定的に生産し続けることは容易ではありません。製造工程結果だけでなく、過去の実験データや文献の調査及び解析結果から仮説を立て、その仮説が正しいかどうかをそれ以降のデータベースで検証するといった作業を繰り返して改善を行い、本質を見極めながら業務に取り組んでいます。 大学及び大学院時代に所属していた研究室では、微生物や動物は一切扱わず、標的のタンパク質を蛍光化するといった、現在の業務とは一見かけ離れた研究をしていましたが、目的を達成するために必要なプロセスは何ら変わりません。学生時代に研究を通して学んだことで、そのプロセスを構築する能力は鍛え上げられました。今後も富山大学で培った経験を存分に活用し、様々な領域の知識・技術を高めて、社会に貢献したいと思います。

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