富山大学理学部案内2021
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 人間活動の規模の拡大と多様化にともない、地球温暖化ガスの放出や大気汚染、水質汚染、土壌汚染などの多様な環境問題が顕在化したため、環境を正しく評価・修復する手段や思考がますます必要とされています。生物圏環境科学科では、化学、地球科学の側面から環境問題へアプローチし、水や土壌に含まれる微量有害成分や環境汚染化学物質の簡便迅速な分析方法を開発し、富山県の土壌や河川水、海水、大気の環境を調査しています。また、排水中の有害成分を除去するための基礎的な研究も行っています。さらに、微量元素や安定同位体比を用いた、陸域と海域の環境動態解明に関する研究を通して地球規模の環境問題にも取り組んでいます。 また、富山県内の豊富な地熱資源の利用を探るために地下水・温泉水の分析や、我が国周辺海域の海底熱水鉱床探査技術の開発を通して、環境に配慮したエネルギー・鉱物資源の開発を目指し、持続的な経済発展にも貢献します。河川の流量測定富山湾海水の採取定性分析実験立山での野外実習室内実験の様子野生動物(タヌキ)の解剖立山の積雪調査の様子雪の結晶 一方、私達の生活は多様な生物に支えられて成立しています。それは汚染物質のバイオレメディエーションや重油分解細菌のような微生物の活用など、環境問題の対策も例外ではありません。それには生物多様性の保全が必要であり、そのためには生物と環境の相互作用や、生命の歴史などを知ることが必要です。生物圏環境科学科では、生物と環境との相互作用についての理解を深めるため、生物機能の仕組みについて、細胞レベルから生物集団レベルまでの幅広い研究を行っています。例えば、生物の環境ストレスに 生物圏環境科学科では、分析化学、生物学、地球化学などの幅広い分野を学び、様々なアプローチで「環境」をテーマに研究に取り組んでいます。 1年生では、一般教養を身につける教養科目の授業を主に受講し、2年、3年生になると専門科目が増え、学生実験も始まります。学生実験では化学物質の定性・定量分析、土壌や河川水の分析、環境中の細菌の培養・プランクトンの観察、哺乳動物の解剖などを行います。 4年生になってからは各々研究室に配属され、卒論発表に向けて自分のしたい研究テーマに取り組んでいきます。 また、立山から日本海という高低差4000mの恵まれたフィールドでの野外実習が長期休暇中に行われます。立山での実習では、高山植物の観察、植物の伸長量調査などの貴重な経験ができました。これらの野外実習は選択科目なので是非色々と参加して欲しいなと思います。 大学生活は、自分の挑戦したいことに取り組むことができる絶好の機会なので、今ここでしかできない体験、学べないことに積極的に取り組んで充実した学生生活を送ってください。大学院理工学教育部生物圏環境科学専攻修士課程1年 最初の3年間は、基礎科目や専門科目の授業などを通して幅広い知識を付けます。座学以外にも学生実験や野外実習があり、富山の自然(海・山・川など)をいかしたフィールドワークができます。研究室に配属されてからは、1つのテーマについて研究を進めていきます。私は、海洋に興味があったため、海をテーマとした研究室を選びました。現在は、”海水魚に含まれる微量金属を用いた産地判別”をテーマとして修士論文の研究をしており、魚試料を集めるために釣りをしたり、地方の魚市場に出向いたり、海水サンプルを採取するために他大学の練習船に乗り込んで、7日間富山湾から長崎にかけて海洋観測を行ったりと、様々な場所に出かけて楽しく研究を行っています。研究生活をする中で、様々な問題にぶつかりますが、その度に研究室の先生方や仲間と共に議論しながら、次のステップアップに向けて試行錯誤を重ねています。また研究室には留学生が多数在籍しているため、常に国際的な視点で物事を考え、議論をすることができ、自身の考えを深める手助けとなっています。様々なことを経験したいと考えている全国の皆さん、ぜひ私達の学科へ学びに来てください。大学院理工学教育部生物圏環境科学専攻 修士課程 2年ラボラトリーResearch groups先輩からのメッセージ学科紹介/生物圏環境科学科12対する防御機構の解明や植物が環境の変化をどのように認識しているのかについての研究、大気・河川水・海洋・地下水中の微生物群集構造についての研究、微生物を用いた環境水の汚染評価・修復方法についての研究、植物と訪花昆虫の関係についての研究、立山における地球環境変動の影響についての研究などを行っています。また、哺乳動物や寄生虫などの野生動物の生態や保全、生命の歴史について理解を深めるため化石を用いた古生態や生命進化について研究を進めています。 さらに、私達の住む地球には、大気や水が存在します。大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)やそれが核となって出来る雲は、さまざまな気候影響を起こしています。それらの影響を解明するため、物理学の視点からその影響の解明に取り組んでいます。また、大気中の水分は、氷晶から雪結晶となり、地上に雪や雨として降ってきます。雪はその成長により多様な形態を持っており、その形態形成メカニズムの解明に取り組んでいます。 富山県には標高3千メートル級の立山があり、春には6mを超える積雪が見られます。この積雪には、冬期間の降雪だけでなく、立山にやってくるさまざまな起源の微粒子や成分が含まれており、地球環境のタイムカプセルとしてその解明にも取り組んでいます。

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