理学部案内2023
13/28

 生物は不変ではなく時間とともに変化します。その変化には、ひとつの個体内で見られるプロセスすなわち形態形成と、もっと長い時間をかけておこるプロセスすなわち系統進化があります。しかし、生物学の視点はプロセスの記述だけではありません。なぜ変化するのか、その仕組みについて探究するのも生物学の大きなテーマです。生体構造学分野ではこれらの面について総合的に研究し、生物の多様性の理解を目指しています。当分野に在籍する教員は植物・動物の形態学、発生学、分類学、系統進化学の専門家ですので、分野の第一の看板は細胞以上のマクロなレベルの系統進化的研究だといえるでしょう。しかし、研究の分野はこれだけに留まりません。その他の研究テーマを見てみると、植物の染色体を扱ったり、昆虫が示す複雑な社会性の成因や、水棲動物の繁殖様式の実態、また遺伝子情報を用いて動物の系統関係や進化を研究している人もいます。人間の活動による生物の大量絶滅が危惧される中、21世紀を迎えた今、生物多様性の正しい認識が我々には益々必要となっています。当分野では生物多様性を広くそして深く学ぶべく、教員と学生がともに日夜努力しています。生体構造学分野 Structural Biology生体構造学実験野外実習 私たち人間や多くの動植物は、1個の受精卵から出発して、ある一定の姿・形を持った、多細胞から成る個体へと発生・成長します。動植物の個体を構成している細胞は、種々様々に分化して、それぞれ特定の役割を担っています。生体制御学分野では多種多様な細胞がどのようにまとまって個体として成り立っているのか、どのように協調しあっているのかについて多方面から研究し、理解しようと努めています。植物学を専攻する4名の教員はそれぞれ、細胞レベルと遺伝子レベルで成長のメカニズムや光合成や脂肪酸合成に関係する遺伝子の発現機構、葉・根などの器官分化を制御している遺伝子を解明しようとしています。動物学を専攻する6名の教員は形態学、生理学、生化学、分子生物学的手法を駆使しながら、光などの環境条件との関係、体内時計や睡眠制御機構、ホルモン作用を手がかりにして水・電解質代謝、脳ペプチドの役割などに関係する様々な調節機構について研究しています。生命科学の世紀になるといわれる21世紀には、今まで以上に多様な生理現象についての理解が求められるでしょう。当分野の教員一同は、次代を担う生物学を志す学生諸君と共に積極的な教育・研究活動を展開しています。生体制御学分野 Regulatory Biology生体制御学実験基礎生物学セミナー卒業論文発表会臨海実習ラボラトリー先輩からのメッセージ生物学科4年 生物学科では様々な分野の講義を学び、自分の興味がある学問を追求することができます。1年次には基礎的な講義に加え、基礎生物学セミナーが開講されます。水族館や博物館、植物園などを訪れ、興味を持った題材についてグループで調べ、パワーポイントで教授や他の学生に発表します。2年次以降は、専門的な講義、学生実験、学外で行う実習が開講されます。学生実験は先生方の研究に近いテーマで行うため、解剖実験や細胞培養、放射線実験などの様々な分野に触れ、実験レポートを書くことで深く学ぶことができます。実習には昆虫、植物、海などのテーマがあり、それぞれに応じて海や山に行きます。私は、自分で採取した昆虫を標本にしました。昆虫の分類、標本作成の規則について深く学ぶことができ、非常に面白かったです。4年次からはそれぞれの研究室に配属され、専門的な研究を行います。3年次まで触れてきた様々な分野を参考に自分の興味がわくテーマを見つけることができるでしょう。あなたも生物学科で自分の興味を追求してみませんか。大学院理工学研究科地球生命環境科学プログラム 修士課程1年 私は現在、時間生物学をテーマとする研究室に所属しており、体内時計や睡眠覚醒にかかわる神経機構を明らかにするための研究に取り組んでいます。ヒトを含め、殆ど全ての生物は約24時間周期の概日リズムを持っていますが、生命現象がどのようなしくみで周期的に調節されているのか、未だ解明されていないことが数多く存在します。本研究室では、世界でも珍しい昼行性動物ナイルグラスラットを、日本で唯一、実験用に飼育・管理し、生体時計機構について細胞や組織、行動レベルの幅広い視点で研究を行っています。生物学科では植物や昆虫、魚類など多様な生物を対象とした研究室があり、研究テーマも様々です。きっと皆さんの興味を惹くテーマが見つかると思います。 大学での生物は講義で知識を得るだけではなく、実験や研究を通して自らの手で疑問を解き明かしていく力を身につけることができます。研究活動はもちろん苦労や困難も多いですが、その分成果が出たときに研究の楽しさや自分の成長を実感できると思います。もっと生物を学びたいという皆さん、お待ちしています!もっと生物学科を知る →12学科紹介/生物学科

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る