理学部案内2023
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立山での野外調査室内実験の様子 人間活動の規模の拡大と多様化にともない、地球温暖化ガスの放出や大気汚染、水質汚染、土壌汚染などの多様な環境問題が顕在化したため、環境を正しく評価・修復する手段や思考がますます必要とされています。自然環境科学科では、化学、地球科学の側面から環境問題へアプローチし、水や土壌に含まれる微量有害成分や環境汚染化学物質の簡便迅速な分析方法を開発し、富山県の土壌や河川水、海水、大気の環境を調査しています。また、排水中の有害成分を除去するための基礎的な研究も行っています。さらに、微量元素や安定同位体比を用いた、陸域と海域の環境動態解明に関する研究を通して地球規模の環境問題にも取り組んでいます。 また、富山県内の豊富な地熱資源の利用を探るために地下水・温泉水の分析や、我が国周辺海域の海底熱水鉱床探査技術の開発を通して、環境に配慮したエネルギー・鉱物資源の開発を目指し、持続的な経済発展にも貢献します。 一方、私達の生活は多様な生物に支えられて成立しています。それは汚染物質のバイオレメディエーションや重油分解細菌のような微生物の活用など、環境問題の対策も例外ではありません。それには生物多様性の保全が必要であり、そのためには生物と環境の相互作用や、生命の歴史などを知ることが必要です。自然環境科学科では、生物と環境との相互作用についての理解を深めるため、生物機能の仕組みについて、細胞レベルから生物集団レベルまでの幅広い研究を行っています。例えば、生物の環境ストレスに対する防御機構の解明や植物が環境の変化をどのように認識しているのかについての研究、大気・河川水・海洋・地下水中の微生物群集構造についての研究、微生物を用いた環境水の汚染評価・修復方法についての研究、植物と訪花昆虫の関係についての研究、立山における地球環境変動の影響についての研究などを行っています。また、哺乳動物や寄生虫などの野生動物の生態や保全、生命の歴史について理解を深めるため化石を用いた古生態や生命進化について研究を進めています。 さらに、私達の住む地球には、大気や水が存在します。大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)やそれが核となって出来る雲は、さまざまな気候影響を起こしています。それらの影響を解明するため、物理学の視点からその影響の解明に取り組んでいます。また、大気中の水分は、氷晶から雪結晶となり、地上に雪や雨として降ってきます。雪はその成長により多様な形態を持っており、その形態形成メカニズムの解明に取り組んでいます。 富山県には標高3千メートル級の立山があり、春には6mを超える積雪が見られます。この積雪には、冬期間の降雪だけでなく、立山にやってくるさまざまな起源の微粒子や成分が含まれており、地球環境のタイムカプセルとしてその解明にも取り組んでいます。野生動物(タヌキ)の解剖河川の流量測定海洋観測定性分析実験立山の積雪調査の様子雪の結晶ラボラトリー先輩からのメッセージ大学院理工学教育部生物圏環境科学専攻 修士課程2年大学院理工学教育部生物圏環境科学専攻 修士課程2年 自然環境科学科では、分析化学、生物学、地球化学などの幅広い分野を学び、様々なアプローチで「環境」をテーマとした研究に取り組んでいます。 1年生では、一般教養を身につける教養科目の授業を主に受講し、2年、3年生になると専門科目が増え、学生実験も始まります。学生実験では化学物質の定性・定量分析、土壌や河川水の分析、環境中の細菌の培養・プランクトンの観察、哺乳動物の解剖など幅広い分野の実験が行えます。その他にも、野外での実習が盛んに行われており、川、海、山でのフィールドワークが行えます。 4年生になってからは各々研究室に配属され、卒論発表に向けて自分の興味がある研究テーマに取り組んでいきます。私たちは環境分析化学の研究室に所属しています。本研究室ではテーマとして新規分析手法の開発、森林火災によって生じた有害物質の分析、細胞を用いた毒性評価など幅広い分野を取り扱っています。 大学生活は、自分のやりたいことを見つけ、挑戦できるチャンスです。皆さんの知的好奇心を十分に発揮し、多くのことを学び充実した学生生活を送りましょう。 質問です!!私が研究しているヘビノネゴザという植物を知っていますか?おそらくほとんどの方は初耳なので、スマホやPCで「ヘビノネゴザ」と検索しているのではないでしょうか。するとそこには、シダ植物の一種でカドミウムなどの重金属を高濃度に蓄積すると書かれているはずです。しかし、こういったウェブ上で得られる情報は、すでに世界のどこかで、誰かが発見したものがほとんどです。しかも、なぜこの植物は重金属を蓄積しても枯れないのか、重金属汚染地という特殊な環境でどのように栄養を獲得しているのか、明確な答えはどこにも掲載されていません。理学部とは、そのような誰も知らない新たな事実を解明する学部です。私は重金属汚染地に育つヘビノネゴザについて研究をしていますが、植物そのものの分析結果に限らず、土壌分析や気象条件を合わせて多角的に解析・考察をしています。微生物や化学分析などの植物以外の知識も必要になるため、分野を超えた多くの先生との交流があり、刺激的です。 入学後は幅広い分野の講義や実験から、それぞれの研究内容について理解を深めることができます。そして3年生の後期から卒業研究に取り組みますが、長い人生の中で研究者の仲間入りができる、とても有意義で貴重な時間となることでしょう。自分の興味・疑問を大切に、充実した学生生活を!もっと自然環境科学科を知る →14学科紹介/自然環境科学科

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