理学部案内2023
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CONTENTS溶液中の金属原子間の結合の瞬間を捉えた! 水溶液中における金(I)錯体会合体に光照射し、それにより開始した振動を時間分解観測する。振動数から光吸収信号に対応する会合種を特定し、そのダイナミクスの解析を行う。■ 研究の紹介 化学反応とは、原子間の化学結合が組変わる現象のことをいいます。マクロ系では時間がかかる反応でも、分子レベルでは、化学反応は1兆分の1秒より短い時間領域で瞬間的におこります。多様な分子が凝縮した中で化学結合が生じた時に、このような短い時間領域で何がおこるのか正確に知ることができれば、化学反応の理解を深めることができます。我々が興味の対象としている金(I)錯体は、高い濃度の水溶液中で2量体から5量体程度の会合体を形成します。この会合体に光を照射すると、金原子の間に化学結合が形成されると考えられていました。我々は超短パルスレーザーを使って10兆分の1秒以下の時間変化を計測できる超高速時間分解分光システムを用いて光照射後の金(I)錯体水溶液のスペクトルを計測しました。その結果、スペクトルの時間変化を調べると、30兆分の1秒程度の周期でスペクトルピークのゆれていることが分かりました。これは、光照射によって金属原子間に結合が生じたことによる会合体の「伸び縮み」運動が一斉におこったことによることが量子化学計算などから分かりました。この振動数からスペクトルを与える会合体の帰属を行い、それぞれの会合種の高速ダイナミクスの解析に使えることを示しました。■ 成果の活用、今後の展開など 自然界でおこる多くの化学反応は、様々な分子が混在して複雑に関与しあって進行する複雑な現象です。こうした化学反応を包括的に理解するためには、凝縮相でおこる超高速過程を観測することが重要です。多くの物質が共存する系では、様々な信号が混在する中で、どのように時間分解信号を識別するのか?本研究は、端的には溶液中で化学結合が形成した瞬間を捉えたことで着目されましたが、こうした科学研究の大きな流れにひとつ道筋をつけたと自負しています。現在、白金など他の金属錯体や、より多くの化学種が混在する複雑系で、金属錯体の会合体を対象とした時間分解計測の成果を上げています。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 01・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 02・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 04・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 05・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 07・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 09・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13理学部入学者受入方針表紙写真紹介TOPICS研究者レポート● 数学科● 物理学科● 化学科● 生物学科● 自然環境科学科・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17・・・・・・・・・・ 19・・・・・・・・・・・・・・ 21・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21・・・・・ 23・・・・・・・・・ 25・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26教員研究テーマ大学院と大学関連施設データが語る富山大学理学部CAMPUS LIFE キャンパススケジュール 理学部イベント情報 理学部の学生生活インタビュー 富山大学ってどんなところ?入試情報表紙写真紹介岩村先生からのメッセージ科学の研究は、人間社会の確かな進歩に貢献するための最も確実な手段の1つです。一緒に未来を作る意欲のある若人をお待ちしております。学術研究部理学系(理学部化学科)岩村 宗高講師02表紙写真紹介

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