理学部案内2023
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富大から海外大学院進学へ原 和花大学院理工学教育部物理学専攻修士課程修了2021年の9月に富山大学大学院修士課程を修了し、11月からイタリアのカメリーノ大学の博士課程に進学しました。そこで、富山大学から海外の博士課程へのキャリアパスについて紹介したいと思います。1.進学のきっかけ カメリーノ大学を知ったきっかけは、大学4年次の研究留学です。富山大学物理学科では、JASSO(日本学生支援機構)による海外の大学への短期留学制度(給付型奨学金付)があり、その制度を利用して、カメリーノ大学に約2か月間研究留学しました。それ以来、共同研究を続けており、またカメリーノで研究したいと思っていました。2.研究内容&留学生活 私が所属していたナノ物理学研究室では、X線を用いた物性測定(X-ray Absorption Fine Structure、通称XAFS)に用いられる理論の開発及び、その理論を用いたXAFS計算プログラムの開発を行っています。これにより、原子レベルの大きさで物質の構造を調べることができます。4年次の留学では、その吸収端から高エネルギー側のスペクトルEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)に対して、カメリーノ大学で開発されているGNXASプログラムを用いて、特殊相対論効果がEXAFS信号に及ぼす影響について調べました。 渡航時、私の英会話力は乏しく、日常会話ですら十分なコミュニケーションをとる能力はありませんでした。そこで、現地の学生と会話するきっかけを作るために、日本のお菓子や日本食を振る舞ったり、日本についての話をしたり積極的に会話できる環境を作りました。その甲斐があってか、友達ができ、観光に連れて行ってもらったり、実家に遊びに行ったりするなど貴重な経験ができました。次の研究テーマを提案してもらうこともでき、帰国後も共同研究を続けています。英会話力も必要ですが、現地の学生や教員と良好な関係を築くことで留学生活がより充実したものになると思っています。また、友達とのコミュニケーションを通して英語の能力も向上しました。研究室のメンバーとのInternational food partyの様子。イタリアのライスコロッケであるアランチーニ、蛇型のクリスマスケーキ(カメリーノ周辺ではクリスマスケーキは蛇の形)やサラミの型をしたチョコレートのドルチェ(Salame di Cioccolato)、ウイグルの餃子、インドのビリヤニやスープ、デザート、日本の手巻き寿司等、研究室の学生や先生たちと、出身国の料理を持ち寄り、パーティーをしました。3.なぜ海外の大学院を選んだのか。 前回の留学でたくさんの刺激的な経験ができたカメリーノ大学にまた留学して勉強したいと思っていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、富山大学の修士課程在学中の留学は叶いませんでした。その際に、カメリーノ大学の教授から博士課程への進学の誘いを受けました。カメリーノ大学にはたくさんの博士課程の学生やポスドク等同世代の人がたくさんいて、お互いに高めあえる環境があります。留学生も多く、世界中の様々な国についても知ることができます。前回の留学中に様々な国の友達ができたことで、世界中のニュースを調べるようになり、物理以外の知識もとても増えました。また、欧州の博士課程は日本と違い、お給料がもらえます。経済面の心配をしなくて済むのも大きなメリットです。メリット、デメリットどちらも考え、どの選択に私の心が踊るかに従い、受験することを決めました。 海外の大学院に進学することは、新しい挑戦ばかりで今後たくさんの困難に直面すると思っていますが、どんな困難も糧にして、成長して戻って来たいと思っています。4.最後に 富山大学物理学科からカメリーノ大学への留学はXAFSといった物性の分野だけではなく、重力波検出器の開発といった宇宙物理の研究でも可能です。実際に、重力波に関する研究を行なっている学生もカメリーノ大学へ研究留学しました。また、カメリーノ大学以外の様々な国の大学や研究機関への留学も可能です。どの研究室を選んだとしてもやる気と良い成績さえあれば留学できます。短期留学にせよ、進学にせよ、富山大学には世界への扉があります。この扉をくぐって、世界へ羽ばたいてみませんか。友達の実家でラザーニャの作り方を習っているところ。小麦粉を製粉するところから経験しました。TOPICS03TOPICS

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