教室の沿革教育活動研究活動第68回日本臨床検査医学会学術集会 in 富山旧富山医科薬科大学臨床検査学講座(1989年6月28日開講)は、2005年4月の大学統合に伴い医学薬学研究部(現在の学術研究部医学系)「臨床分子病態検査学講座」と名称を変更した。初代櫻川信男教授の退任後、2000年9月より北島勲教授(現理事、副学長)が2代目教授として就任した。その後、2023年3月に退任されるまでの22年間半を受持された。その後、2023年8月より准教授であった仁井見英樹が3代目教授として就任した。准教授のポストは今後公募する予定であり、2016年より検査部から原田健右講師が教育・研究・診療活動を担当している。また、2015年4月より附属病院検査部は輸血細胞治療部と統合し、検査・輸血細胞治療部に改組され、北島部長の後任として、2019年4月より仁井見が部長を兼任している。臨床検査教育は日進月歩の分野であり、特に遺伝子検査分野ではその進歩は著しいため、教育内容も毎年のアップデートを必要とし、検査法の基本的な理解が重要である。学部教育では医学科3年次生の臨床講義に加え、OSCE前の採血実習を担当している。臨床実習では検査手順から血液・生化学・細菌・生理検査の実習を行っている。大学院教育では、修士課程1年次に「病態検査学」、博士課程では「分子検査学持論」と遺伝子検査の実習を行っている。仁井見は2022~2023年度に6名の修士課程大学院生(2024年3月に卒業)、そして現在4名の修士課程大学院生と2名の博士課程大学院生を指導しており、大学院生の教育には特に注力している。疾患の分子病態を解析し、疾患の病態検査に貢献するバイオマーカーの探索や検査法開発を講座の研究目的としている。ここでは北島勲前教授に定期的にアドバイスを頂きながら推進している仁井見の臨床検査分野(感染症の新規検査法の開発)の研究を記載する。敗血症などの感染症において、感染症起炎菌迅速同定&定量検査法であるMeltingTemperature(Tm)mapping法を開発(国内特許取得:特許第4590573号、国際特許取得:EP1997886)し、検体採取から4時間程度で160菌種以上を同定して菌数を測定(菌数/ml)することを可能とした。これは細菌の塩基配列を読むことなく、細菌から得られる7つのPCRampliconのTm値(塩基配列の相違を反映する)の組合せをデータベースと照合することで迅速・簡便・安価に起炎菌を同定かつ定量出来るものである。現在、富山大学附属病院にてTmmapping法の保険収載を目指した医師主導の臨床性能試験を実施している。また、Tmmapping法の研究開発に関連し、細菌DNA汚染の全く無いeukaryote-madethermostableDNApolymeraseを開発した(特許第5583602号)。更にこれらの研究成果を応用して、現在、くすりコンソーシアム(内閣府と富山県、富山大学との地方創生事業)の取組みとして医薬品製造工程における迅速無菌試験法の実用化に努めている。その他、感染症の新規バイオマーカーとしての「菌数」の有用性の評価や、白血球バイオマーカーNE-WYの実用化研究を推進している。また、高感度ATP測定技術を基に迅速な薬剤感受性試験法を開発した(国内特許取得:特許第6898011号)。ATP測定技術はミトコンドリア病(MELAS)やALSにおける髄液中ATPの測定による病態評価にも応用した。上記以外にも犯罪捜査に有用な簡易遺伝子検査法の開発や、いろいろな遺伝性疾患の遺伝子検査を実施してきた。以上、当講座では学部や大学院での臨床検査教育と研究活動を積極的に行い、検査・輸血細胞治療部を通して臨床に役立つ活動を展開している。今後は研究成果を実用化して、臨床に広く役立つ新たな検査を提供できるように努めたいと思う。(仁井見英樹)91第2章 医学部・附属病院 臨床分子病態検査学講座
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