医学部50周年
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研究の変遷教育の変遷今後の展望【スタッフ】富山医科薬科大学が開学した当初の1970~80年代は、本学には救急医学を論じる講座は存在しなかったと推察されます。筆者が学生時代を過ごした1990年代には附属病院に救急部という部門は存在しましたが、講座としてはまだまだ救急医学を語る状況ではなかった時代であったと記憶しています。時も流れ、2003年9月に念願の富山医科薬科大学 医学部 救急・災害医学講座が開講されることとなり、奥寺敬教授が初代教授として信州大学から着任されました。文字通り、救急医学や災害医学を学術的に研究し、臨床医学として発展させる講座ということになります。2005年10月には3大学再編統合により、富山大学となり、富山大学大学院では危機管理医学という名称で救急医学を発展させた学術研究を開始しました。今まで一般企業などで扱われてきた危機管理という概念を医学という観点から導入・応用し、体系化したものになります。2023年3月より、2代目教授である土井智章が岐阜大学から就任したことで、新体制となり、医学部として、救急・災害医学という講座名と大学院としての危機管理医学という講座名を両者ともに「救急医学講座」と改名しました。これは、講座名をより簡潔に、わかりやすくするという意図であり、原点回帰という意味を込めての改名でありました。当時の研究課題を過去の業績集などから振り返ってみると「病院防護に関する国内共同研究」「新しい意識障害スコアの開発と検証」「脳卒中初期診療コースの開発」「災害現場での医療に用いる新しい医療機器の総合開発」「災害派遣チーム(DMAT)の運用」などが挙げられ、脳卒中研究や災害に関する研究が主に行われてきました。2023年以降は新体制となり、直ぐという状況ではありますが、研究課題としては「敗血症における血小板機能や血管内皮細胞の解析」「高気圧酸素治療の治療効果解析」「病院前救護における救急救命士の役割とその客観的解析」などが研究課題としてあげられ、現在、研究体制の構築中です。2003年9月より2023年3月までに「救急・災害医学講座(危機管理医学)」において、修士を取得したものは12名、博士課程を修了し、博士(医学)を取得したものは15名、論文による博士取得者は2名となっています。新体制の2023年4月以降に博士(医学)取得したものは1名となっており、2024年現在も修士課程1名、博士課程3名、研究生が1名当講座で研究中です。学部教育に関しては3年次の基礎配属は受け入れて、心肺蘇生に関する原理や救急検査法の実習を提供してきました。新体制後もその方針を引き継ぎ、基礎配属の学生は積極的に受け入れています。4年次は救急・災害医学として臨床講義1コマ90分授業を8コマ担当していたが、2006年からは10コマ担当となりました。講義目標は「すべての日常診療の基礎となる救急医療とその基礎となる救急医学、その応用であり幅広い社会との接点を持つ災害医療とその基礎となる災害医学について学ぶ」としていましたが、2023年度より、新体制として、「救急医療は医の原点であり、その原点を学ぶ」「救急医療の社会における役割を説明できる」「災害医療における医師の役割を理解する」という大目標を掲げ、臨床教育に力を入れています。また、臨床実習前OSCEは「救急」を担当しており、講義・実習を行っています。さらに2024年度より、救急医学の臨床実習が2週間から3週間となり、より臨床教育の現場では救急医学の重要性が強調されるようになりました。その重要性に応えるべく、より充実した救急医学教育を提供しています。救急医学は医の原点と言われていますが、医学部の中でも最も遅くに誕生した講座の一つであります。まだまだ発展途上の学問であり、臨床・教育・研究という三本柱を充実させて、社会の発展に寄与していきたいと考えております。教授 土井智章(2023.3-)助教 楠澤佳悟(2024.8-)(土井智章)93第2章 医学部・附属病院 救急医学講座

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