認定標準模擬患者およびその養成者認定書本講座は、平成5年(1993年)に当時の富山医科薬科大学医学部に看護学科が新設されるに伴い、一般教養担当の講座として発足している。初代教授として福田正治先生(富山大学名誉教授)が着任し、教育・研究の基盤を構築された。福田教授の任期中、平成17年(2005年)には富山医科薬科大学、富山大学、高岡短期大学が統合し、新生富山大学の医学部に属する講座として、教育・研究に携わってきた。平成25年(2013年)4月からは、第2代の教授として堀悦郎が着任した。初代の福田教授の任期中より、医学部および薬学部の1~2年生を対象とした教養教育を担当している。平成14年(2002年)の医学教育改革により準備教育コアカリキュラムの導入が図られた後、「人の心と行動II」として教育を行ってきた。平成25年に福田教授の跡を継ぐ形で堀が着任してからも、科目名を「行動科学」と変更して継続しているが、これまでの準備教育コアカリキュラムの内容に加え、米国の医師国家試験の科目である「BehavioralScienceinMedicine」の内容を扱うに至り、より医療基礎科目としての色を濃くしている。また、平成27年(2015年)に「医学教育分野別評価制度(国際基準に対応した医学教育認証制度)」の調査を受けた際には、「行動科学」の重要性が改めて指摘され、医学部だけでなく、平成28年(2016年)4月からは薬学部でも必修科目とされた。これらの動きは、「行動科学」の重要性を示しており、「行動科学」の内容を将来の医療従事者に提供していくニーズは今後も高まると考えられる。現在でも、「行動科学」の講義内容は毎年更新されており、常に新しい情報を提供している。また、医学科2年次以降にも継続した「行動科学」教育を準備している。「行動科学」とは別に、平成27年度からは堀が「脳科学入門」を教養科目として開講している。これは、本学には神経科学分野の世界的に優れた研究者が多く在籍しており、本学の研究活動上の大きな特徴であるにもかかわらず、その基本的な研究手法やトレンドを俯瞰する講義がなかったため、神経科学の基礎的な内容について入学間もない学生たちに触れてもらうために開講している。特に神経生理学および心理学を融合させた脳科学の入門的な講義内容となっている。本講座は、その沿革からも分かるように、平成5年に看護学科が設立されるに伴って誕生している。その歴史的背景から、看護教育にも重点が置かれている。看護学科の学部教育として、「形態機能学(分担)」、「看護研究(分担)」を担当している。「看護研究」では、毎年5~8名の看護学科4年生を担当し、看護技術の効果に対する生理学的な検証、ヒトの行動の心理生理学的な検討などを行い、卒業論文としてまとめている。二代目教授として堀が就任してからは、博士前期に加えて博士後期過程も担当し、臨床・生体機能看護科学分野の大学院教育を行っている。令和3年(2021年)には富山大学の博士(看護学)として第1号となる中野元を輩出している。また、国際交流活動についても、本学看護学研究科では第1号となる交換留学生として、中山友月をノルウェー北極大学に令和4年(2022年)に1年間派遣している。このように、本学看護学の大学院教育としてはオリジナリティの高い活動を行っている。これらの大学院教育は、そのまま本講座の研究活動となっている。医学教育における貢献として、令和4年(2022年)からは医療系大学間共用試験実施評価機構の認定標準模擬患者として、本学だけでなく他大学のOSCEにも参加している。また、令和5年(2023年)には標準模擬患者養成担当者の認定も受け、共用試験の完全公的化に向けた準備も行っている。OSCEは薬学部でも実施されており、今後は看護教育においても実施される可能性があり、認定標準模擬患者の需要は今後ますます増加(堀 悦郎)すると思われる。94〈医療基礎〉 行動科学講座
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