教育研究社会的貢献老年看護学講座では、65歳以上の高齢者を対象に、より健やかにその人らしい生活を送ることを支援する看護のあり方を探求しています。特に、人間の尊厳を基盤として、老年期の身体的・心理的・社会的変化やスピリチュアリティ、発達課題を踏まえ、多様な健康レベルに応じた看護実践能力を兼ね備えた人材育成に取り組んでいます。 1)講義・演習:講義では双方向を意識して、アンケートで学生の要望を把握し、毎年講義内容に改良を重ねています。事例展開演習では、実習症例を参考に、認知症や高齢者の特徴を盛り込んだ事例教材を作成し、看護展開を行っています。学生が看護課題を自力で抽出できるように解説し、看護課題の添削と個別指導、グループ間でのディスカッション、発表を行うアクティブラーニングを取り入れています。体験型演習では、紙おむつの装着体験や、外部施設において最新の福祉用具の見学と高齢者疑似体験の機会を設けています。 2)老年看護学実習・総合実習・技術演習:老年看護学実習では、県内の病院2施設、老人保健施設6施設、総合実習では病院2施設で実習を行っています。実習では、主に学生1名に対し、1名の患者/利用者を担当し、情報収集、アセスメント、ケアプラン立案、実施、評価を行っています。学生が安全にケアの介入を行えるように、看護部長や看護師長、臨床看護師、多職種専門職者と連携を密にし、快適な実習環境を提供しています。また、技術演習では、認知症高齢者とのコミュニケーションに関する討議や、看護技術の確認を行っています。 3)看護研究:学生間で希望するテーマ(認知症、非薬物療法、介護者、生きがいなど)を決定し、文献検討や質問紙調査を行っています。論文作成のプロセスについて、学生と教員間でディスカッションを重ねながら学習しています。さらに大学院教育では、指導教員と大学院生間でディスカッションを重ねながら研究課題を決めています。老年看護学領域における研究動向をふまえ、積極的に多くの院生の意見・アドバイスなどを得ながら進めています。研究内容は、認知症高齢者を介護する家族の介護認識と健康度の関連、特別養護老人ホームの暮らしの中での看取りのあり方などについて行いました。これまでに12名の大学院生を輩出しており、学会発表や学会誌への投稿を行うなど、広く研究活動を進めています。研究では、高齢者とその家族の生活を支援するための看護実践や保健福祉制度などに関する研究に取り組んでいます。主に高齢者の意思決定支援については、脳卒中に罹患した高齢患者と家族が意思決定場面で何を大切にしたいのかという価値観をもとに、意思決定ガイドを開発し、ランダム化比較試験によって効果検証を実施しました。また、転倒については、「たしかめ体験を行った片麻痺患者の思考プロセス」や「一般病棟熟練看護師の思考と実践のプロセス」を明らかにした上で、認知症患者に身体拘束を回避した転倒予防ケア行動尺度の開発と検証を行いました。共同研究では、社会技術研究開発センター(RISTEX)の社会資本の活性化を先導する歩行圏コミュニティづくり(中林美奈子研究プロジェクト)において、市民、行政、企業、大学の産学連携を行いました。また、金沢大学と転倒予防における多職種連携の促進阻害要因を明らかにし、転倒予防連携プログラムの開発と効果検証を行いました。高齢者の生活と保健福祉制度や高齢者虐待予防と看護など当該専門領域の研究を推進し、介護支援専門員への支援ならびに県内の看護師を対象とした研修会、市民向け講演会の開催等により富山県内の老年看護の中核拠点として地域社会に貢献しています。(青木頼子、中堀伸枝)102 老年看護学講座
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