NPコースの褥瘡切除演習当講座は平成6年4月にスタートした。現在の看護棟4階を拠点として教育研究活動ができるようになったのは平成8年2月である。初代教授の落合宏はウイルス学を専門とする医系教官として、感染看護学実験室の立ち上げや看護学科微生物学実習の導入など基礎医学教育の構築に尽力した。平成21年4月からは金森昌彦(運動器病学、肉腫研究、心身健康科学)がこの講座を継承した。開講15年を経て、当大学の看護教育の中での人間科学1講座が受け持つ教育の位置づけもすでに定まってきており、医学の基礎を看護学生が横断的に身につけやすいように工夫して授業を行っている。授業科目は形態機能学、身近な医学(1年次)、疾病学、栄養生化学、成人・高齢者臨床医学(2年次)、形態機能学演習など、いずれもオムニバス方式を取り入れ、医学科・看護学科の先生のご協力を得ながらの教育である。特に疾病学の講義においては独自のテキストを作成し、疾病の病態がよく理解できる看護師育成を目指している。研究面においては感染看護領域を専門とする吉井美穂(基礎看護学1)とともに実験室の運営を引き継ぎ、その一部をバイオセラピー(生化学)実験室として使用するようになった。その結果、看護学生の卒業研究や大学院修士課程での研究として、カテキンなどの各種フラボノイドの有効性を検証する実験を行うことができた。その成果は吉井らのカテキン研究とともにアジアパシフィック伝統看護学会の招待講演並びに英文総説としてまとめられている。これまでに行った疾病学研究のテーマは高齢化社会の課題に対応する意味から、1)足趾に注目したロコモ予防の研究、2)ナツメの健康効果、3)腫瘍温熱療法(オンコサーミア)の3つを主眼にしてきた。いずれも地域活性型の産学連携研究として実施しており、地域レベルでの小研究会も主宰した。1)は大学院看護博士課程研究のテーマとして実施しできており、2)は学内の放射線基礎医学講座、生物学講座のほか福井県立大学、神戸学院大学を含めた国内共同研究である。3)は2015年からハンガリー・オンコターム社とともに医師主導型の国際共同研究として、その後は附属病院における自由診療として100例以上を実施した。特に乳がん治療には貢献できたものと思う。これらを実施することで、当大学が目指す「東西医学の融合」の理念実現の一翼を担ったと考えている。さらに令和4年の大学院改組に伴い、看護科学プログラムでは新たに診療看護師(NP)コースを立ち上げ、令和5年から学生受け入れを開始した。外科基本領域を中心にした急性期コース、在宅・慢性期領域を中心にした慢性期コースの2コースを選択できる。医師不足や医師の働き方改革を補う手段の1つとして厚労省が主導する特定行為研修を学ぶと同時に修士の学位が得られるもので、日本NP教育大学院協議会に認可された中で、国立大学では3番目の立ち上げとなった。現在1年生2名、2年生3名が在籍しており(令和6年度時点)、令和7年度末には初めての卒業生を輩出できる予定である。NP教育は現代の高齢社会の動向を考えると、その需要はとても高い。またこの教育は医学部と附属病院との総合力であり、本学から自他共に将来に向かって地域貢献できる実践看護師としての活躍が期待される。この場を借りて、皆様にNP教育に対するご協力に心からお礼を申し上げたい。令和7年度からは、人間科学1講座と人間科学2講座が合併することで、より効率的かつ円滑な講座運営を進めていくことになっており、さらなる看護教育への貢献が期待される。(金森昌彦)105第2章 医学部・附属病院 人間科学1講座
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