医学部50周年
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人間科学2講座(構成員:准教授1名)では、在宅看護に関する教育(講義、実習、看護研究等)と研究に取り組んでおります。先ず教育についてとして、在宅看護の科目としての成り立ちをご説明いたします。「在宅看護」は、1996年のカリキュラム改正で科目立てがなされ、2009年に統合分野に位置づけ、2022年に「地域・在宅看護論」に変更となり1)、現在に至っております。在宅看護の必要性、重要性が増す背景には、高齢化に加え「家族構成の変化」「介護の社会化」等があります。介護の社会化を示す数値でもある介護給付費等の総額は、11兆1,912億円(令和4年度)で過去最高を更新しています。また、高齢者のみならず、精神疾患の方、難病療養者や医療的ケア児も在宅看護の対象で、その必要性や重要性は増す一方となっています。在宅看護は、療養生活をする方とその家族等を対象に、心身のケアのみならず、本人の希望、家族の希望、生活環境や家族の介護力等から療養生活に必要なサポート体制の構築にも携わります。本講座では、訪問看護ステーションにて実習を行っており、在宅療養者の理解、在宅に特化したアセスメント・課題設定やケアの特徴、そして、家族看護や多職種連携等から訪問看護の特性や在宅看護の専門性を修得します。次に、自身の研究活動を紹介いたします。博士課程では、「脳梗塞、脳出血、くも膜下出血」とHbA1cとの関連2)で、大規模調査のデータを用いて分析をしました。ここ数年は、在宅療養者の生活の場とケアの課題に着目し、「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)における医療的ケアの提供の課題」をテーマに取り組んでいます3)。サ高住は、設置以降増加を続け、約27万8000人(2024年)4)が暮らす不可欠な社会資源となっていますが、療養生活支援や看取り等のあり方に関し、課題があると捉えています。一方、国土交通省は、市町村のまちづくりとの整合を図るサ高住の取り組みを推進しており、サ高住のコミュニティ形成に関する研究にも昨年から着手しております5)。在宅看護の専門性や特性を生かした地域共生社会の構築過程や地域に及ぼす影響の検証も試みる予定です。以上より、在宅看護学領域で担う教育、研究の内容は広く、その重要性は今後も高まるのは明らかです。人々が生きること・生活することへの支援と他者との共生について人間科学の視点を生かしながら、研究者、教育者として邁進したいと考えています。【参照・引用】(髙倉恭子、岩田 実)1061)本学における在宅看護の変遷と地域看護学の再構築─看護基礎教育課程の第5次カリキュラム改正を受けて─栗本一美他2名,新見公立大学紀要第43号,pp.113-119,2022.2)KyokoSunaga,KatsuyukiMiura,YuchiNaruse,et.al.:Glycatedhemoglobinandriskofstroke,ischemicandhemorrhagic,inJapanesemenandwomen.CerebrovascularDiseases26(3),310-316,2008.3)高齢者の住まい確保と過不足ないサービス付帯の実質化に向けた基準の整備に関する検討JSPS科学研究費JP17K124494)サービス付き高齢者向け住宅の登録状況https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_01.pdf5)サービス付き高齢者向け住宅によるテーマ型コミュニティ形成の過程と効果の検証  JSPS科学研究費JP23K10341 人間科学2講座

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