4つのコンピテンシー北越地域医療人養成センターは2022年に文部科学省「ポストコロナ時代の医療人養成拠点形成事業」において全国で11拠点だけが選定された事業により設置されました。この事業は「大学医学部における養成課程の段階から医師の地域偏在及び診療科偏在や高度医療の浸透、地域構造の変化等の課題に対応するため、将来、地域医療に従事しようとする意思をもつ学生を選抜する枠を活用し、地域にとって必要な医療を提供することができる医師の養成に係る教育プログラムの開発・実施を行う教育拠点を構築すること」を目的として全国の医学部が複数で拠点を形成し、実施することを条件としています。富山大学はお隣の新潟大学とともに特に新潟富山の県境地域の医師不足を教育的なアプローチから解決することを目標としてこの事業に応募し、採択されました。北越地域医療人養成センターは主に新潟大学と富山大学の教員を主たる構成員とし、本事業を統括しています。両大学が開発したオンデマンド教材を含む教育コンテンツを集積して、両大学の医療人教育に提供することを目的として富山大学に本部、新潟大学内に分室を設置し、教員、事務補佐員を配置しています。現在、富山大学側には特命助教2名と事務補佐員1名、ICT担当者1名が活動しています。主な活動としては下記の4つのコンピテンシーを設定し、入口戦略として大学入学前の戦略として、教育委員会等と連携して、高校生を対象としたインターンシップや高校訪問、模擬講義等を実施することで、地域医療や地域を守ることに関心を持つ高校生を増加させます。また、教育戦略として大学入学後の戦略として、全医学生必修のエッセンシャルコースと,地域枠学生等を対象としたアドバンスドコースを設定します。エッセンシャルコースでは、現場での実践的能力を修得します。アドバンスドコースでは、医師不足のため地域医療構想の重点支援区域となっている新潟県上越地域のフィールドワークを行って、各種統計情報の分析から施策の提言までを学修する統合型教育を行います。そして、最後に出口戦略として大学卒業後の戦略として、本事業の修了者による学生指導を含めた地域を守る医療人の継続的な育成を行います。また、専門医(総合診療、救急医学、感染症、社会医学系専門医)取得などのキャリア形成を支援します。① 地域医療プロフェッショナリズム:入学早期からの地域医療に関する講義や実習を通じて、多職種協働を含めた地域を守るマインドを醸成します。② 臨床医学的能力:コロナ禍でも高度な臨床教育を実施するためにシミュレーション教育を充実させ、地域を医療面から守るうえで重要な臨床医学的能力(特に総合診療や感染症に関する能力)を高めます。③ 社会医学的能力:マネジメントスキルやデータサイエンススキルに関する教育を充実させ、地域をシステム面から守るうえで重要な社会医学的能力(特に疫学、公衆衛生学、救急医学、災害医学に関する能力)を高めます。④ 情報通信技術(ICT)運用能力:デジタルトランスフォーメーション(DX)やICTに関する教育を充実させ、オンライン会議や遠隔医療等に対応できる能力を修得します。富山県だけではなく、新潟大学、新潟県と協働してこの地域での医療を持続可能なものにしていくために我々はこの事業を通じて地域に貢献していきたいと考えています。可能な限り、本事業の期間が過ぎた後も地域医療充実のための活動を継続していきたいと思っておりますので、ぜひ、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。(高村昭輝)108 北越地域医療人養成センター
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