医学部50周年
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スタッフ診療・臨床研究基礎研究和田暁法(講師・診療教授)が副診療科長、医局長、病棟医長を務め、医局の屋台骨を支えています。菊地尚平(講師)は外来医長と教育医長を兼務しています。面倒見が良いので、研修医や学生に頼られています。神原悠輔(助教)は、興味のあることを次々と掘り下げています。後期研修医は4名、峯村友樹、奈邊愛美、洞口龍介、そして藤平琢磨です。当科での実習を柱とし、当科関連の富山県立中央病院、富山市民病院、そして都立駒込病院で研鑽を積み、日々たくましく成長しています。血液内科のスペシャリティを高めながら、ジェネラリストとしての視点も育み、やがては富山県の血液内科診療を支えてくれる逸材になってくれるものと期待しています。診療面では皆様に多くの患者様をご紹介頂いて心から感謝申し上げます。原則的に初診の患者様はわたくし自身が拝見し、親切丁寧な対応を心がけています。鉄欠乏性貧血から骨髄移植まで、全ての血液疾患の診断と治療をチームとして行い、最先端の医療を積極的に導入しています。また、佐藤が企画して推進している第三相の臨床研究「DENOSULY試験」も順調です。この試験は「リンパ腫サバイバーに骨の健康を(BetterBoneHealthforLymphomaSurvivors)」をキャッチフレーズとし、目標100例のエントリーを完了したところです。和田は、腫瘍崩壊症候群の予防を目的としたラスブリカーゼの再投与例をまとめ、先日行われた日本血液学会学術総会で優秀賞を受賞しました。また彼の専門である多発性骨髄腫の領域では、急性腎不全を伴った症例に対し抗CD38抗体ダラツムマブを用いた治療を積極的に行って、その成績をまとめているところです。菊地はおもに悪性リンパ腫を担当しており、現在は根治困難な中枢神経原発悪性リンパ腫の臨床研究を行なっています。当院は単施設として本疾患の症例が豊富ですので、質の高いデータが得られることを期待しています。神原は主に急性骨髄性白血病に関する臨床研究に取り組んでいます。この領域では高齢者にも投与可能なBCL-2阻害薬が開発され、目覚ましい予後の改善が得られました。しかし、この薬には薬物相互作用のせいで用量調節が難しいという弱点があります。そこで、血中や唾液中の濃度測定によってこの弱点を克服しようと、本学薬学部との共同研究を行なっています。基礎研究に関しましては、2022年春に血液内科の実験室を新設したこともありまして、各人が躍進を続けております。佐藤は造血器腫瘍を対象とした新たな抗がん剤であるDPP8阻害剤の開発に成功、富大(とみだい)にちなんでTominostatと命名し、論文発表と同時に特許出願を行いました。佐藤のもう一つのテーマである細胞表面のCD26を標的としたT細胞リンパ腫に対する新たなCAR-T細胞療法の開発にも成功し、論文発表を行いました。現在は企業への導出を目的に、某制約メーカーとの共同研究に取り掛かっています。和田は、齋藤滋学長が富山大学の責任者を勤める合原ムーンショットプロジェクト複雑臓器制御系未病科学的研究に携わっています。この研究おいて和田は、正常な形質細胞と骨髄腫細胞、そして骨髄腫の未病であるMGUSの形質細胞は、ラマン顕微鏡観察ではっきりと区別できることを示し、周囲を驚かせました。菊地は、多発性骨髄腫の新規治療薬の開発を行っています。より効率的なアポトーシス誘導を可能にしようとする試みは留学時代から継続しているテーマであり、現在はIAP阻害剤を臨床応用しようと研究に取り組んでいます。神原は東京大学が主催する医療RWD活用人材育成事業に参加、取り組んだテーマは最優秀賞の評価を頂いて修了し、現在も機械学習や医療AIなど最先端分野で研究を進めています。(佐藤 勉)114 血液内科

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