講座職員当講座は、富山県における小児医療等の提供体制を検討する「富山県小児医療等提供体制検討会」の中間とりまとめにおいて、発達障害や虐待によるトラウマ、さらにそれによる二次障害など、発達やこころの問題に悩む子どもに対する医療体制が十分ではない現状を踏まえ、こどものこころと発達に関する専門家(児童精神科医ならびに小児科医)の育成と、既存の富山県リハビリテーション病院・こども支援センターなど専門的機関と地域の医療機関が連携し、継続的に診療できるシステムを体系化し構築する方向性が示されたことを受け、令和4年6月1日に富山県が富山大学に設置した寄附講座です。本講座の設置の目的の一つに、富山県におけるこどものこころと発達診療の拠点の一つとして、専門的医療を担うというという使命があります。富山大学附属病院こどものこころと発達診療科は、0から15歳までのこどものこころや発達に関わる様々な問題に対して診療を行っています。当科は小児科学講座と神経精神医学講座と共同してこどものこころと発達診療の専門医の育成を行うことを主要な目的として設置されているため、診療には小児科医または精神科医専門医である子どものこころの専門専攻医を中心とした予診を行わせていただいています。また、診療には複数名の医師や医学生が同席させていただくことがあります。こどものこころと発達診療科は予約制で、外来通院が可能な患者さまを対象としています。現在は月・火・木曜日に外来診療を行っています。初診については地域連携枠を使用した初診患者の受け入れを行っています。また、院内他診療科(小児科、神経精神科、富山大学附属病院こども医療センターなど)との連携を行うため、院内初診枠を使用した初診患者の受け入れも行っています。当科を初めて受診される方には、ご本人またはご家族が初診用問診票をダウンロードして事前に記入し持参いただいています。再診はこどものこころと発達診療科の他、小児科または神経精神科外来にて行われています。院内外の関連する機関と連携し、ひとりひとりの診療にあたります。当科ではこどもにみられる以下の疾患などを対象としています:・様々な不安症(全般不安症、パニック症、社交不安症、強迫症など)・気分障害(うつ病や双極性障害など)・統合失調症・神経発達症(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、チック・トゥレット症など)・心身症また、必要時には各種発達検査や心理検査の他、脳波検査(デジタル脳波計による事象関連電位検査を含む)、MRI(脳画像解析や統計画像解析を含む)といった各種検査を行っています。特に、当科は神経精神科と連携して、精神科疾患の早期診断・早期治療の推進に力を入れています。現在、神経発達症、様々な不安症、うつ病、双極性障害、そして統合失調症といった多くの精神疾患が児童思春期の頃に発症するか、最初の症状が現れることが知られています。統合失調症を中心とした精神疾患の初期症状が疑われるものの、まだ明確に発症したとは言えないような状態(「こころのリスク状態」)を示す子どもたちに対するこころの診療、また、神経精神科と協同した研究活動を行っています。そのため、研究への参加をご紹介させていただく場合もあります(参加は任意であり、強制されることはありません)。富山大学附属病院こどものこころと発達診療科では、こども医療センターとの連携はもちろん、地域の医療機関や教育、福祉など様々な領域との連携をとりながら、こどものこころと発達の問題に対する診療を行っています。(辻井農亜)118 こどものこころと発達診療科
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