医学部50周年
134/268

昭和51年に呼吸器外科、消化器外科を専門とする山本恵一先生が初代教授として外科学第1講座を開設され、昭和54年の附属病院開院とともに第1外科の診療が開始された。平成6年、不整脈外科を専門とする三崎拓郎先生が第2代教授に就任され、三崎拓郎教授在任期間中に、成人、小児ともに心臓手術症例数が飛躍的に増加した。平成22年より小児心臓外科を専門とする芳村直樹が第3代教授として第1外科診療部門長を務めている。開学以来の歴史については富山大学医学部創立40周年記念誌をご参照いただくこととし、本稿では開学40周年以降、現在までの10年間の変遷について述べる。富山大学第1外科は「心臓移植以外のすべての心臓血管外科手術を行っている全国でも数少ない施設」のひとつである。「成人心臓外科」、「小児心臓外科」、「血管外科」のチームで年間500例以上の手術を行っており、全国屈指の手術成績を挙げている。年々低年齢化していく小児の手術においてはできるだけ遺残病変を残さない丁寧な手術を心掛け、年々高齢化していく成人の手術においては人工心肺を用いないオフポンプ冠動脈バイパス、低侵襲心臓手術(MinimallyInvasiveCardiacSurgery:MICS)、ステントグラフトによる大動脈瘤手術等の「体にやさしい」心臓血管外科手術を発展させてきた。以前から成人心臓外科チームは第2内科と、小児心臓外科チームは小児科と、血管外科チームは放射線科と緊密に協力し合い、大学病院としては「垣根の低い」横のつながりを生かして高いレベルの診療を行ってきた。平成29年に富山大学循環器センターが開設され、同年4月に第1例目の体外設置型補助人工心臓(VentricularAssistDevice:VAD)の装着手術が行われた。その後、循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(IMPELLA®)の導入、植込型VADも開始され、成人心臓外科チームは「重症心不全の外科治療」でも全国的な注目を集めることになった。令和3年、我が国においても心臓移植適応外とされる重症心不全患者に対する植込型VADにより自宅での生活を目指すDestinationTherapy(DT)が導入され、当院も北陸地方唯一のDT施設として認定された。小児心臓外科チームは「先天性心疾患を持って生まれた患者さんに、新生児期から成人期まで安全かつ継続的な医療を提供しうる」北陸地方で唯一の拠点施設としての役割を果たしてきた。新生児から成人まですべての先天性心疾患に対応して北陸の先天性心疾患診療を支えるとともに、「多発性心室中隔欠損症」、「総肺静脈還流異常症」、「無脾症候群」、「純型肺動脈閉鎖症」等において全国でもトップレベルの手術成績を挙げ、それぞれの領域でオピニオンリーダー的な立場に立っている。血管外科チームも最近の進歩は著しい。オープンサージェリーと血管内治療に精通し、「現在我が国で使用可能なすべてのデバイスが富山大学で使用可能」な状況になっている。発症1年以内のStanfordB型大動脈解離に対しても、亜急性期にステントグラフト内挿術を行うことで将来の瘤化を予防し、広範囲大動脈人工血管置換術を避けることを目的としたPreemptiveTEVARをいち早く導入し、当科はPreemptiveTEVAR施行施設として多くの紹介患者さんを受け入れている。「北陸に住む人々に良質の循環器医療を提供する」という責任を果たすべく、富山大学第1外科は北陸地方の最後の砦としてこれからも前進していきたいと考えている。(芳村直樹)120 第一外科

元のページ  ../index.html#134

このブックを見る