医学部50周年
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附属病院整形外科は1979年の創設以来今年で45年目を迎える。外来診療は月・水・金はスタッフが中心になり、初診・再診に分かれ、午後は専門外来として脊椎、膝関節、股関節、骨軟部腫瘍、手外科などの分野があり、それぞれのスペシャリストが診療に当たっている。病棟診療はA:膝関節・スポーツ整形、B:股関節外科、C骨軟部腫瘍・脊椎脊髄外科、D:脊椎脊髄外科、E:手外科、マイクロサージェリー、上肢外傷、以上の5チーム体制で、それぞれに研修医および実習に参加する学生が配置されている。朝カンファレンス・ラウンド、術前カンファレンスなどを行い、また治療方針の決定、術後報告、問題症例提示などを通じて討論が行われている。これらは整形外科専門医・専攻医のみならず、研修医や学生にとっても重要な時間である。火・木が手術日であり、予定手術は週平均15件程度以上が行われている。また2020年から開始された救急部の新たな活動に伴い、多くの救急外傷手術などにも対応している。従って、整形外科の手術件数は附属病院の中でも上位を争うように非常に多くなってきている。診療分野を概観すると、脊椎脊髄外科では、川口教授、関講師、鈴木助教、牧野助教、二川病院特別助教、八島医師のもとで年間約250以上の手術が行われている。頚椎・腰椎の変性疾患、後縦靭帯靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症、側弯症、脊髄腫瘍、転移性脊椎腫瘍、外傷性脊椎脊髄損傷など幅広い疾患を手がけており、また本病院でいち早く導入されたナビゲーションシステムや術中脊髄機能モニタリングを的確に組み合わせて治療行い、安全安心の脊椎外科治療を行っている。2019年12月からは全国に先駆けて脊椎ロボットを導入し、その普及にも努めている。当科の誇る頚椎椎弓形成術に加えて、内視鏡を用いた最小侵襲脊椎外科手術も数多く行っており、さらに側弯症、成人脊柱変形などに対する脊椎矯正手術治療では富山県下の中心施設としての役割を担っている。骨軟部腫瘍は、金森教授、安田前准教授、鈴木助教のもと富山県、並びに隣接県の中核的診療施設としての役割を担っている。術前術後の化学療法の標準化、切除縁の標準化はもとより、さらに安田前准教授が中心となり当科で新たに開発した腫瘍用人工骨幹やパスツール処理骨による患肢温存を図っている。オンコサーミアの臨床研究、さらに新規の化学療法の導入と集学的治療の推進を行い、今後のさらなる治療成績の向上を目指している。関節外科では、下条講師、伊藤助教、平岩診療助手、上嶋診療助手、近藤医師のもと、患者満足度の高い機能的な関節再建を目指して診療が行われている。軟部組織バランスについての解析や臨床研究を行いながら、高機能の関節再建を目指した人工関節置換術が実施されている。高度の骨欠損や変形を伴う人工関節置換術には、同種骨移植を積極的に用い、ナビゲーション手術、膝関節ロボット手術も積極的に施行している。一方、股関節外科のスペシャリストも充実し、人工股関節置換術のみならず、寛骨臼回転骨切り術や大腿骨回転骨切り術などの関節温存手術も行われている。特に股関節手術にはcomputerassistedsurgery(CAS)が積極的に用いられている。これら手術の術中、術後の関節動態、関節機能などを多元的に解析し、その成果の臨床への還元が推進されている。スポーツ整形外科では、下条講師、上嶋診療助手による膝前十字靭帯損傷に対する解剖学的二重束再建術や半月板縫合術などの関節鏡視下手術が多いが、適応例には関節軟骨症に対する同種軟骨細胞移植術や自家骨軟骨移植術を行っている。また、当科の基礎研究で取り組まれている新たな関節軟骨修復医療について、近い将来の臨床的な実現が期待される。手外科は頭川助教と廣川病院特別助教が中心となり、マイクロサージェリー技術による切断指の再接着や遊離組織移植による再建手術、上肢外傷、リウマチの上肢の障害に対する手術が積極的に行われている。さらにwideawakehandsurgeryなどの新たな取り組みも展開されており、この手術術式は知見が積み重なってきており国内外から注目されている。各診療グループの人数は決して多くは無いが、それぞれが最大限の努力をしながら富山県内における医療施設の最後の砦として、全ての患者に対する熱い気持ちを持って診療に当たっている。(川口善治)124 整形外科

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