1979年10月の附属病院開院時に片山喬教授が診療科長に就き、1996年から布施秀樹教授が、2015年11月からは北村寛が診療科長を務めている。現在は西山直隆副診療科長/病棟医長/診療教授、桧山佳樹外来医長/講師を中心に、万全の体制で入院および外来診療を行っている。10年前は手術日が週2日であったが、手術件数の増加と共に手術枠も増え、現在は週4日手術を行っている。診療の主体は泌尿器がん領域である。2016年12月にダビンチサージカルシステムが導入され、県内初となるロボット手術を実施した。現在は前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術、腎がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術および腎摘除術、腎盂・尿管がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術、膀胱がんに対するロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術および完全体腔鏡下腸管利用尿路再建術を年間約150件行っている。ロボット手術は悪性腫瘍のみならず、腎盂尿管移行部狭窄症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術や膀胱瘤(骨盤臓器脱)に対するロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術も行っている。2024年1月からは附属病院の手術支援ロボットが2台体制となり、より多くの泌尿器科ロボット手術が実施可能になっただけでなく、手術待機期間が短くなり、富山医療圏におけるニーズに応えられるようになっている。外科治療と同様にがん薬物療法にも力を入れており、腎がん、尿路上皮がん(膀胱がん、腎盂・尿管がん)、前立腺がん、精巣がんに対するエビデンスに基づいた最新の治療を提供している。さらに尿膜管がん、陰茎がん、後腹膜悪性軟部腫瘍などの希少がんに対する治療も実施している。またがんゲノム医療を積極的に行い、数々の臨床試験で実績を積んできたことから、国内外から多くの治験を誘致し、常時実施している。がん以外で、最近10年間で治療件数が増加した領域として、腎移植と小児泌尿器科が挙げられる。腎移植は第二内科/腎臓内科と共同で生体腎移植と献腎移植(脳死下および心停止下)を行っている。生体腎移植では単孔式腹腔鏡下ドナー腎採取術を導入し、ドナー(提供者)への負担軽減と早期社会復帰を実現している。献腎移植では県内のもう1つの腎移植施設である富山県立中央病院と合同チームを結成し、ドナー発生時に随時対応できる体制を整えている。血管が脆弱な長期透析等のレシピエント(移植を受ける人)に対しては、第一外科/血管外科の協力を仰ぎ、安全かつ確実な移植を実践している。小児泌尿器科は停留精巣、陰嚢水腫、急性陰嚢症、包茎に対する基本的手術だけでなく、膀胱尿管逆流に対する根治手術(デフラックス注入術を含む)、巨大尿管、尿管瘤、異所性尿管に対する根治手術、尿道下裂に対する尿道形成術、小児悪性腫瘍に対する根治術など、術式が幅広く展開されている。またビデオウロダイナミクスやプレッシャーフロースタディなど、排尿機能評価のための専門的検査も随時実施している。あいち小児保健医療総合センターとの綿密な連携体制があり、小児泌尿器科に関するほぼすべての疾患に対応可能となっている。このように、特定機能病院として高度で最先端の医療を日々提供していると共に、さらなる高みを目指した治療・技術の開発と若手・中堅医師のスキルアップを余念無く続けている。(北村 寛)128 泌尿器科
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