富山医科薬科大学附属病院は1979年10月から診療を開始していますが、長い間、形成外科治療の多くは、外科系各診療科がそれぞれに行ってきました。難しい再建術の際には、他大学の形成専門医が富山大に来て手術することもありました。しかし附属病院に残る初期研修医を増やし、形成外科医を育成するためにも、学内での形成外科設立が必要となりました。2018年12月に附属病院にて、学生および教職員を対象とした形成外科に関する講演会が開催され、富山県出身である佐武利彦に講演のお声がけをいただきました。講演時には医学部生、教職員から多くのご意見をいただき、形成外科への大きな期待が感じられました。2019年には附属病院形成外科特命教授の全国公募と選考が実施されました。2020年1月に横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科から佐武、関西医科大学から国内留学生岡本茉希さんの計2名が、「形成再建外科・美容外科」を標榜して診療を開始しました。2021年4月より岡山大学から小野田 聡君、北野病院から葛城遼平君、横浜市立大学から小林耕大君が着任して4名体制となり、2022年には2名の専攻医(立花 岳君、都倉加保里さん)が加わり6名体制、2023年も専攻医2名(瀧 京奈さん、池田達也君)と東京医科歯科大から生坂圭輔先生を迎え8名体制となりました。2024年には専攻医4名(能登美波さん、飴井千佳乃さん、石塚達也君、吉野涼太君)、北里大から池田友紀さん、信州大から永井史緒さんを迎え全9名体制となっています。近年は富山大学、富山県出身の専攻医が多く入局するようになり、若い専門医前の医師が中心の医局ですが、未来の富山の形成医療を担う若者の育成ができることを、とてもうれしく感じています。診療の中心は悪性腫瘍切除後の再建外科となっています。乳房再建、リンパ浮腫に対する複合治療、頭頸部再建などの再建が多いです。特に第二外科(乳腺部門)、産婦人科、耳鼻咽喉科、(佐武利彦)口腔外科とは、キャンサーボード、カンファレンスを定例開催して、治療方針を決定しています。合併症が少なく低侵襲、機能面、整容面を重視した再建法の開発を進めています。また精神科、産婦人科、泌尿器科や院外の医療施設と連携して、性別不合(旧:性同一性障害)の治療を2021年11月から開始し、診療においては北陸地方の中心的拠点となっています。2023年12月からは呼吸器外科と合同でNuss法による漏斗胸治療も開始し、徐々に患者さんが増えている状況です。2024年7月から美容・レーザー外来を立ち上げ、10月からは顎顔面外科・口唇口蓋裂・血管腫の治療を専門とする医師が着任されます。形成外科の様々な領域をカバーできる体制になりつつあります。医学部生、初期研修医、専攻医への教育、専門医取得後のキャリア形成について重視しています。診療科の歴史も浅く指導者も不足しておりますが、できるだけ若手の希望に沿った研修や教育が受けられるよう考えています。当科では疾患や治療法、患者さんの悩みについてよく理解することが前提となりますが、通常は専門医取得前後に術者になるような手術でも、富大ではearlyexposureにより専攻医1年目から再建術の術者となります。これによりチーム力が格段に上がります。目的意識もみなで共有できます。また医学部生、研修医についても実臨床で縫合を多く経験することを重要視しています。医学部の研究医も3名が在籍しており素晴らしい研究成果を発表してくれています。専門医取得後は、各自の専門領域を深め臨床研究や基礎研究により論文作成、学位取得の指導を行って参ります。最後に、地域医療の将来構想の中での私たちの立ち位置を見据え、国内外における高い競争力を身に着けること、若い医師のエンゲージメントを高かめていくための努力をこれからも積み重ねて参ります。135第2章 医学部・附属病院 形成再建外科・美容外科
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