医学部50周年
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沿革臨床教育研究地域貢献新リハビリ  テーション室▶▲旧リハビリ テーション室富山大学のリハビリテーション診療は、1979年の富山医科薬科大学附属病院リハビリテーション部の開設に遡り、2005年の富山県内の3国立大学統合により富山大学附属病院リハビリテーション部となった(沿革については、リハビリテーション部の項を参照いただきたい)。2020年に学術研究部医学系リハビリテーション科が創設され、特命教授に服部憲明が就任し、同時に附属病院の診療科として、今西理恵子診療助手との二人体制でリハビリテーション科の診療が開始した。その後、2022年に大学院にリハビリテーション医学講座が設置され、服部が特命教授から教授に名称変更となり、さらに、乙宗宏範が助教として加わり、臨床、教育、研究体制が整った。まだ歴史が浅いため、今後の展望も踏まえ、紹介させていただく。急性期からの早期離床やhospitalization-asso-ciateddisability(いわゆる廃用症候群)予防、あるいは、退院後に希望される生活を想定したより積極的なリハビリテーション治療の提供を目標としている。そのため、北2階病棟にサテライトリハビリテーション室の配置、病室でも使用できる簡易エルゴメータの導入などを行ってきた。そして、2022年12月に屋外エリアを含めると以前の約2倍の広さを有する新リハビリテーション室がオープンしたが、そこには、上記の目標の実現のため、ADLスペースや各種免荷訓練装置、トレーニングマシン、さらに、WelwalkWW-2000などのリハビリテーション支援ロボット装置を導入した。リハビリテーション診療は、主に入院患者を対象とし、介入依頼のあった症例に対し、国際生活機能分類に基づいた病態、リスク、併存疾患、ADL、社会参加や個人因子、環境因子など、患者について全方向的な把握に努め、障害克服や患者の活動を育むという視点から、リハビリテーション治療の目標設定、介入計画を策定している。また、難渋症例などは、毎朝のカンファレンスで、療法士と互いの専門性から議論を重ね最善のリハビリテーション治療を提供できるように努めている。専門医養成に関して、2021年度より富山県リハビリテーション病院・こども支援センターから引継ぎ、富山県リハビリテーション科専門研修プログラムを運営している。リハビリテーション科独自の診察能力、診療に必要な様々な専門的技術を身につけることだけではなく、患者や家族への共感と、療法士などのスタッフのプロフェッショナリズムへの敬意を持ちつつ、論理的に具体的な治療プログラムを作成し、transdisciplinaryteamの士気を高め、牽引できるような医師の育成を目指している。神経生理学や運動学、神経画像を用いた脳血管障害や神経難病の病態解明、予後予測精度の向上、非侵襲的脳刺激による機能回復促進などのニューロモデュレーションの開発など、神経リハビリテーション研究に主に取り組んでいる。現在、大学院の修士課程に2名、博士課程に1名が在籍している。また、これら以外にも、加齢、がんやサルコペニアなどをテーマとした研究も行っている。さらに、地方の活性化という意味でも、富山県の企業などと産学連携でリハビリテーション医療や福祉分野の機器を開発している。北陸、特に富山県は、リハビリテーション医療については、リハビリテーション科専門医数、回復期リハビリテーション病棟病床数など、様々な指標で他の地域と比べ、遅れをとっていることは否めない。超高齢化や人口減少が今後さらに進む地域社会を支えるためにもリハビリテーション医療体制の充実が急務であり、専門医研修プログラムの連携施設・関連施設と力を合わせ、学生教育、リハビリテーション科医の養成に努めている。地域の皆さんに、急性期から回復期、生活期に至るすべてのフェーズで、良質なリハビリテーション医療やリハビリテーションマネジメントを提供できるように、専門医育成だけでなく、関連職種との連携強化や患者・家族への様々な啓発などにも積極的に取り組んでいきたい。(服部憲明)136 リハビリテーション科

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