医学部50周年
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総合診療科は2004年に大学附属病院の中に新設されて、約20年が経過しました。初代診療科長の山城教授から引き継ぎ、2022年から新たな診療科長の下で診療を行っています。病院内では外来での毎日の診療、救急外来でER当番の応援、病棟で救急病棟と一般病棟での診療と診療範囲が広がりつつあります。病院外では、関連病院や診療所、特に朝日町、上市町、南砺市などとも寄附講座を介して協力しながら連携して地域医療/家庭医療を展開しています。さらにはここ数年で大学附属病院から富山県内の地域のみならず、県境を越えて上越市、糸魚川市、飛騨市への展開がますます可能になっています。総合診療の専門医養成では日本専門医機構の総合診療専門医の他、総合内科専門医、日本プライマリ・ケア連合学会の新家庭医療専門医の取得が可能です。主な診療科の活動としては前述のとおり、①大学附属病院での診療活動、②地域医療での診療応援活動、③人材育成:地域医療/家庭医療や病院総合診療、および在宅医療に従事したい医師、さらに総合診療関係の研究やコーディネートに興味のある医師に対してキャリアパスを支援、④地域貢献:住民参加型の地域包括ケアシステムを構築を行っています。診療内容としては紹介状のない初診の患者さんや複雑な要因が関与すると思われる患者さんを対象に、こころのケアを含めた総合的視点から包括的、全人的医療を行っています。具体的には病名・診断が未定の初診の患者さん、頭痛・めまい・発熱・食欲不振・体重減少などを訴え、多くの診療科の協力を得ながら鑑別診断を必要とする患者さん、感冒や結膜炎・扁桃炎・蕁麻疹・腰痛など内科以外の領域を含んだcommondiseaseの患者さん、社会心理的な要因に対する配慮が必要と思われる患者さんなどに対して必要に応じて全ての診療科と協力して診療を行っています。診断が確定すれば、臓器別専門診療科へ紹介するとともに、患者さんの希望があれば当科でのフォローアップも行っています。救急部との協力体制のもと一次救急の患者さんへのプライマリ・ケアにも取り組んでいます。また、医療福祉サポートセンターとも協力し、診療所や開業医の先生のニーズを把握しながら病診連携を推進しています。地域からの紹介患者の受け入れや、病院内でのコンサルテーション業務も意欲的に行っており、お困りの場合にはいつでもご紹介いただければ医局員一同、全力でお手伝いさせていただきます。研究においては多職種連携やその教育、プライマリ・ヘルス・ケア関連の研究、寄附講座と協働して地域医療の実情に関連する総合診療関係の研究を実施しています。現在、大学院に進学する医局員もおり、少しずつリサーチフィールドを拡げています。教育に関しては卒前教育では富山県特別枠、地域枠の学生を中心に地域医療に興味がある学生、身体診察や臨床推論に関する授業を担当しています。また、卒後教育では前述の総合診療専門研修のみならず、附属病院では初期臨床研修医の外来研修などを主に担当しています。最近、遠くは上越市、糸魚川市、飛騨市、県内からも様々な地域医療機関から総合診療医の派遣を依頼していただきます。地域での総合診療医のニーズが明らかに高まってきている中で我々もたくさんの総合診療医を今後も輩出していきたいと思っておりますが、十分な数とは言えない状況です。アメリカでFamilyMedicineのレジデンシーを終えた医局員、MPHを終えた医局員も加わりました。これまでは領域専門医として活動してきたが、開業や地域病院での勤務を見据えてリカレント教育などを受けたいという医師の研修も積極的に受け入れていますので、ぜひ、ご相談いただき、一人でも多くの総合診療医、総合的に患者さんを診ることができる医師を地域に送り出していければと思っています。(高村昭輝)137第2章 医学部・附属病院 総合診療科

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