診療緩和ケア研究教育2024年10月に現在の「腫瘍内科・緩和ケア内科」に科名変更を行った。まずは前身である臨床腫瘍部について紹介する。臨床腫瘍部の歴史は比較的新しく、2006年「がん治療部」設置に始まる。当時、「がん対策基本法」が成立し、がん診療連携拠点病院が全国に設置された。当院のがん治療部もこの流れに沿ったものであろう。翌2007年には菓子井達彦助教授が同部に就任、がん診療連携拠点病院加算を届け出た。2010年には「集学的がん診療センター」が設置され、がん治療部から「臨床腫瘍部」に名称が変わった。菓子井助教授は2012年に特命教授に昇任した。2017年4月より林が同部教授として着任し、新たなスターを切った。その後、7年半たったところで、冒頭に申し上げた科名変更に至った。現在の当科の状況を説明する。2025年1月現在、当科の外来診療としては週4回の「腫瘍内科外来」、週3回の「がんゲノム医療外来」、週3回の「緩和ケア内科外来」を行っている。腫瘍内科外来では林(教授)が胸部、梶浦(講師)が腹部を担当する。さらに臓器別の専門に当てはまらない希少がん、肉腫、原発不明がんを腫瘍内科として院内外から紹介を受けている。がんゲノム医療を担当する(2022年度から吉田医員が参入)が、詳細については同センターの項にて述べているので本項では割愛する。がん治療の進展は近年目覚ましいものがあるが、いまだに予後不良であることも事実である。また、抗がん治療により生命は維持されたとしても治療による副作用、後遺症、疼痛など、がん患者の悩みは尽きない。がん診療においてある意味では最も困難な状況に対し、緩和ケアが力を発揮する。当科では設立以来緩和ケアに力を入れてきた。緩和医療専門医である梶浦、非常勤の村上(診療教授)が緩和ケア外来を担当する。2023年度からは緩和医療を専攻する水野(医員)が加わった。さらに多職種からなる緩和ケアチームを統合する緩和ケアセンターを梶浦がセンター長としてまとめ、各診療科らの依頼を受けて対応している。2022年度からは公認臨床心理士も加え、患者の要望に対応している。医局員は非常に少数であるが、「がんの診療」においては未解決問題が山積しており、少しでも診療の向上を目指して、研究活動を行っている。腫瘍内科分野においては多施設との共同研究を多く行っており、がんゲノム医療に関するものや、北信がんプロ(福井・石川・富山・長野の医療系大学による共同事業)の活動としてのデータベース研究などを行っている。緩和ケア内科分野では当院のチーム医療を中心とした臨床研究や、疼痛緩和に使用するオピオイド誘発性便秘に対する共同研究など幅広く行っている。また、緩和ケア領域の大学院生は在宅緩和の研究を行った。さらにベトナムからの外国人大学院生を受けいれ、基礎分野の教室と共同して、がん領域の基礎的な研究も行っている。これらの研究体制により、2017年からの7年間で和文・英文を合わせると著書11編、総説35編、原著64編、症例報告18編を発表するに至っている。医局員や共同研究者に感謝しかない。もともと上記の通り病院における役割のために創設された部署であるが、学部学生や卒後大学院生の教育も任されている。大学医学部においては「臨床腫瘍学講座」として「臨床腫瘍学」、「緩和医療学」の講義を担当している。さらに、臨床実習も毎年100人以上の学生に対して、がんゲノム医療と緩和ケアの実際を体験してもらい、他の診療科とは一味違った臨床実習を提供している。以上のように腫瘍内科と緩和ケア内科の活動を等しく行っていることから、2024年10月に「腫瘍内科・緩和ケア内科」と名称を変更するとともに、「診療科」としての新たなスタートを切った。医学部創設50周年と機を同じくして、名称を変更したことは偶然とはいえ、何か特別なものと感じている。全国的にも珍しい「腫瘍内科・緩和ケア内科」をよろしくお願い致します。(林 龍二)139第2章 医学部・附属病院 腫瘍内科・緩和ケア内科
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