遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング遺伝カウンセリングとは?遺伝子診断と遺伝カウンセリングの体制遺伝カウンセリング室当部門は臨床における遺伝カウンセリングのニーズに応えるために2017年11月に開設した。遺伝子診療部では1名の専任の認定遺伝カウンセラーと8名の兼任の医師が、それぞれの専門性を活かし、遺伝性疾患やがんゲノム医療、NIPT等に伴う遺伝カウンセリングを行い、広く遺伝医学の問題解決に取り組んでいる。特にがんゲノム医療では遺伝子パネル検査に伴うエキスパートパネルに参加し、臨床遺伝専門医の立場から意見し、二次的所見の有無を評価して遺伝カウンセリングに繋げることを行っている。また、当部門は日本遺伝カウンセリング学会で北信越地区の地域活性化委員会の活動を始めており、北信越地域の各施設と連携しながら遺伝カウンセリングの普及と活性化に努めている。診断のつかない難病についてはIRUD(未診断疾患イニシアチブ)に参加することで、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析により、可能な限り診断に至るようになった。遺伝子診療部ではジェネティックエキスパート資格を持つ臨床検査技師2名も兼任スタッフとして参加しており、検査・輸血細胞治療部とも連携しながら遺伝子診療を行っている。診療の実績としては、年間400件程度の遺伝カウンセリングを実施しており、更に診療各科の診療補助対応を年間250件程度行っている。また、BRCA1/2検査に関する遺伝カウンセリング連携施設は富山県内で現在17施設あり、地域連携活動も行っている。以下、遺伝カウンセリングの詳細について述べる。「がんゲノム医療」において遺伝子検査を行うと、遺伝性腫瘍の発病に関連した遺伝子の変化が見つかる(二次的所見)ことがある。この場合、遺伝性であるために患者の血縁者も同じ遺伝子の変化を有している可能性があるため、二次的所見として得られたゲノム情報を患者のみならず、血縁者の健康管理に役立てることも可能となる。遺伝子診療部では、遺伝カウンセリングを通して二次的所見に関するさまざまな心配や疑問への相談に対応し、患者と一緒に最善の解決法を考えるようにする。遺伝カウンセリングとは、遺伝がかかわる疾患の患者・家族またはその可能性のある方に対して、生活設計上の選択を自らの意思で決定し行動できるように支援する医療行為である。そのため、必要に応じて遺伝子診断を行い、遺伝医学的な判断に基づき遺伝予後などの適切な情報を提供する。遺伝子診断とは、病気に関わる遺伝子を調べ、遺伝医学的な見地から結果を分析して診断するものである。遺伝子診療部では、外部の検査機関や当院の検査部遺伝子検査室(写真)と連携して遺伝子診断を行う。実際に遺伝子診断を行う場合、先ずは検査に関する説明を行って同意いただいた後、少量の血液からDNAを抽出して疾患に関連する遺伝子を解析する。遺伝子検査の結果は決して外部に漏れないよう厳重に管理されている。(仁井見英樹)149第2章 医学部・附属病院当院の遺伝子検査室 遺伝子診療部
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