医学部50周年
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循環器センターの設置循環器センターの現状今後の展望近年、循環器診療では、デバイス治療やカテーテル手技を中心とした低侵襲治療の発展が著しい。また循環器内科・心臓血管外科・小児循環器内科の垣根を越えた集学的なアプローチが必要となっている。そこで、循環器疾患を包括的に治療する目的で2017年に当センターが設立された。当センターは1)循環器内科部門:(センター長兼責任者:絹川弘一郎教授(第二内科))、2)心臓血管外科部門(責任者:土居寿男講師(第一外科))、3)先天性心疾患部門(責任者:芳村直樹教授(第一外科))、4)低侵襲治療部門(責任者:上野博志講師(第二内科))、5)心臓リハビリテーション部門の5部門により構成される。循環器内科部門;心不全・不整脈・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)・心臓弁膜症・心筋症・肺高血圧症・動脈疾患など様々な循環器疾患を対象に、最先端の医療を取り入れ、最適で安全な医療を提供している。特に最重症の心不全患者に対して2019年より植込型補助人工心臓による心臓移植までの橋渡し治療を開始した。更に2023年からは、心臓移植を前提としない長期在宅補助人工心臓治療を行っている(2024年時点で全国20施設)。心臓血管外科部門;虚血性心疾患、動脈瘤、閉塞性動脈硬化症に加え、弁膜症、不整脈などを対象に手術を中心とした集学的治療を行っている。心臓外科チームと血管外科チームがあり、手術実績は心臓、大血管の手術で年間250例ほど、末梢血管を含めると400例を超え富山県内では最多の症例数を誇る。先天性心疾患部門;新生児から成人先天性心疾患まで幅広い分野にわたり、国内トップレベルの治療成績をおさめている。当院は小児心臓病診療に関する北陸地方のセンター施設として位置付けられており、小児科医、麻酔科医、産科医、メディカルスタッフと協力し、年間150例前後の先天性心疾患手術を行っている。また、心筋症や不整脈の遺伝子解析、遺伝相談、心疾患児の発達検査や発達相談、難治性川崎病の治療、学校心臓検診の精密検査などの包括的な診療を行っている。低侵襲治療部門;これまで行われていた、虚血性心疾患や不整脈、胸部・腹部大動脈瘤に加え、構造的心疾患(SHD)と言われる心臓弁膜症など心臓の構造異常に対してもカテーテル治療が可能となった。循環器内科医・心臓血管外科医・麻酔医・メディカルスタッフからなるハートチームにおいて、患者の医学的な状態と社会的背景を考慮し、積極的にカテーテル治療を行っている。治療実績として、不整脈アブレーション:約200例/年、大動脈瘤ステントグラフト:約50例/年行っている。SHD治療として、重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI:2015年開始)、心房中隔欠損症のカテーテル閉鎖術(2016年開始)、重症僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術(2018年開始)、心房細動による脳梗塞予防として経皮的左心耳閉鎖術(2020年開始)を行っている。心臓リハビリテーション部門;循環器疾患を持つ患者に積極的に運動療法を行うことで、身体的・心理的状態を改善し動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制、軽減することを目的としている。心リハプログラムを心不全の入院や、心臓手術の後に積極的に活用することにより、退院後の生活の活動性を安全に高めるとともに、病気の再発・再入院・死亡を減少させることが可能となる。研究および教育にも力を入れており、新しい治療法や診断技術の開発を目指し研究を行っている。また、医学部生や研修医に対して、実践的な教育を通じて高度な専門知識と技術を伝え、次世代の循環器専門医を育成している。さいごに、北陸地域における循環器診療の最後の砦としての役割を担うべく、さらなる発展を目指して行きたいと考えている。(上野博志、絹川弘一郎)150 循環器センター

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