はじめに内科部門 外科部門 放射線診断部門放射線治療部門化学療法部門病理部門(吉岡伊作、藤井 努)膵臓・胆道疾患は、診断・治療が困難な領域であり、一般病院における通常の検査では発見できないことも多い。また手術は高難度かつ合併症率も非常に高く、熟練している外科医は非常に少ない。富山大学附属病院 膵臓・胆道センターは、2018年9月に設立された。全国的にもこの分野の専門家がそろっている施設はほとんど無く、膵臓・胆道専門のセンターは国内で初めての設立となる。内科・外科・放射線診断科・放射線治療科・臨床腫瘍部、病理部などの各領域における専門家が、膵臓・胆道疾患の診断・治療に取り組んでおり、また大学病院ならではの新規治療方法や新規薬剤の治験、臨床試験なども多数行っている。膵臓・胆道疾患の診断・治療には、内視鏡が重要な役割を果たしている。特に超音波内視鏡はCTで発見できない早期膵癌の検出や膵嚢胞・胆嚢ポリープの鑑別診断に有用である。また、超音波内視鏡下穿刺吸引法により膵臓などの腫瘤に対して針生検を行い、正確な診断を得ることができる。当院には、経口胆道鏡(胆管内視鏡)やバルーン内視鏡などの最新鋭の内視鏡機器が整備されており、これらを駆使して難しい胆道疾患の診断をしたり、一般的には開腹手術が行われる総胆管結石を内視鏡で治療している。これらは非常に専門的なもので、高度な技術を必要とするが、熟練している証である日本胆道学会指導医(内視鏡診断部門)資格は、富山県内では当院の安田教授だけが取得しており、世界各国でこうした内視鏡技術の指導を行っている。膵臓・胆道癌手術は高難度で、特に膵頭十二指腸切除術は約1%の手術死亡率、約40%の術後合併症発生率と報告され、腹部手術の中で最も高難度の一つとされている。肝胆膵外科高度技能専門医である藤井教授は、新しい膵空腸吻合法であるBlumgart変法を開発し、本邦でも群を抜いて安全かつ確実な手術を行っている。さらに最難治癌である膵癌の集学的治療の開発にも積極的に取り組み、局所進行切除不能膵癌に対して血管合併切除を伴うConversion手術を行っており、英文誌に良好な成績を報告している。また、拡大手術ばかりではなく、適応となる症例に対しては膵を最大限に温存する術式やダビンチによるロボット支援下手術や腹腔鏡下手術などの低侵襲手術を行っている。当院におけるCTやMRI検査、PET-CT検査などは非常に精度が高く、さらに野口教授をはじめとした放射線診断の専門家により、他院で診断できなかった疾患・病態を発見している。診断が難しい膵臓・胆道疾患においては当院で改めて画像診断を行い、確実な診断を行うことにより最適な治療を選択している。周術期における血管造影・血管内治療も、迅速かつ高度な対応を行っている。膵癌は、進行度によっては放射線治療が有効であることがある。近年では、局所進行膵癌に対して放射線治療を行い、切除不可能な膵癌を切除可能にするという治療戦略が行われている。齋藤教授が率いる放射線治療部門は、高精度放射線治療である定位放射線治療や強度変調放射線治療を数多く手がけており、悪性腫瘍に対する重要な治療の一端を担っている。膵臓・胆道癌においては、化学療法は非常に重要で最新の治療を駆使することで、良好な効果を得ている。林教授を中心としたスタッフによる適切な化学療法により、治療成績は大きく改善している。また、痛みなどの症状に対しても最善の治療を行っており、苦痛をやわらげ、病気に向き合えるような質の高い医療を提供している。検査により採取された組織を、平林教授が顕微鏡で最終診断し、最善の治療を検討する判断材料としている。また手術で切除した組織も顕微鏡診断を行い、進行度や治療効果などを判定し、その後の治療を決定するのに大変重要な役割を担っている。153第2章 医学部・附属病院 膵臓・胆道センター
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