糖尿病は2型糖尿病だけでなく、1型糖尿病、内分泌疾患、肝疾患、膵疾患などによる糖尿病、遺伝子異常、妊娠糖尿病など多様である。また小児から高齢者まで幅広い世代にわたり生じ、合併症や併発症としてのサルコペニア・フレイル、認知症や悪性疾患などその病態は一人一人異なる。さらに近年、新たな糖尿病治療薬や優れた性能のインスリンポンプなどデバイスが次々と開発されている。我が国に1000万人いると見積もられている糖尿病患者に対し、「1000万通りの個別化医療」を提供することを目標とし、各専門領域による総合的な診療、多職種連携、病診連携体制の構築が必要である。糖尿病センターは、糖尿病およびその合併症を包括的に診療し、また糖尿病発症前のメタボリック症候群の段階から生活療養指導を行う目的で、戸邉一之教授(内科学1)をセンター長として2019年4月に設立された。糖尿病センターでは、糖尿病代謝・内分泌内科、循環器内科、眼科、腎臓内科、産婦人科などの各領域における専門家が共同し専門的治療にあたる。さらに、糖尿病療養指導士(CDEJ)、とやま糖尿病療養指導士(LCDE)の資格を持つ看護師、栄養士、薬剤師が包括的に生活療養指導に関わる。糖尿病センターは、1)精密血糖評価介入外来、2)先進1型糖尿病外来、3)高度肥満症治療外来、4)特定保健指導・重症化予防指導外来の4つの部門により構成される。1)精密血糖評価介入外来:持続皮下グルコース測定により、血糖の変動パターンや変動幅を詳細に把握することで、質の高い血糖コントロールが可能となった。これまで医療者がデータを出力できるFreeStyleリブレPro、患者が自らリーダーをかざすことで皮下グルコース値を知ることができるFreeStyleリブレなどがあったが、2020年4月にこの保険適応が拡大され、現在はFreeStyleリブレ2、DexcowG7CGMシステムなど最先端の機器を用いた治療が可能となっている。2)先進1型糖尿病外来:インスリンを個人のライフスタイルや血糖変動に併せて持続注入するインスリンポンプ療法、グルコース値をもとに基礎インスリン注入を自動調整する機能(ハイブリッドクローズドループシステム)を備えた最新機種を用いた治療が提供可能である。3)高度肥満症治療外来:肥満症は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症などの代謝疾患のみならず、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、整形外科的疾患、肥満関連腎疾患など多くの疾患リスクを高める。高度肥満症治療外来により、内科、外科、神経精神科、麻酔科、理学療法科、看護師、栄養管理室がチームとなり、包括的に合併症の評価と適切な減量治療が可能となった。我が国では、2014年より肥満症に対して減量代謝改善手術が保険適応となった。当外来では適応を慎重に評価した上で、適切な症例には外科的治療も選択可能となっている。4)特定保健指導・重症化予防指導外来:当院の糖尿病療養指導士やとやま糖尿病療養指導士により、メタボリック症候群や合併症の予防・治療に向けた生活療養指導を行っている。当センターでは、糖尿病センター会議を月に一度行い、糖尿病、メタボリック症候群の治療の実態や課題を共有するとともに、院内全体の血糖管理を安全に行えるよう、糖尿病リンクナース会との連携やインシデント発生予防に向けた取り組みを行っている。左は糖尿病センターのロゴマーク。世界糖尿病デーのキャンペーンで用いられるブルーサークルは“UniteforDiabetes”(糖尿病に対して団結しよう)というキャッチフレーズを表したシンボルマークである。これに富山県の県花であるチューリップをあしらって作成された。(藤坂志帆)154 糖尿病センター
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