医学部50周年
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2019年12月に施行された「脳卒中・循環器病対策基本法」に基づいて策定された「循環器病対策推進計画」には、脳卒中や心臓病の患者さんやそのご家族等への情報提供や相談支援に関する施策が重要視されている。その趣旨に基づいて、2022年4月厚生労働省がスタートさせた「脳卒中心臓病等総合支援センター」のモデル事業の一環として、当院は全国の10都道府県11病院の一つとして指定された。このセンターの理念は、脳卒中や心臓病等に関する専門的な知識を有し、地域の情報提供等の中心的な役割を担う医療機関として、当院のみならず富山県、医師会、県内の医療施設、急性期病院、回復期リハビリテーション病院、かかりつけ医、患者・家族、そして患者団体などと連携しながら、富山県全体の脳卒中・心臓病等の患者さん、ご家族に対して、脳卒中・心臓病等の予防、治療、リハビリテーションなどにおける包括的な支援体制を構築して、富山県の患者さんを支援する体制を今まで以上に充実させることを目的としている。当院では、そのために医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、リハビリテーション技師、事務など多職種がチームを結成している。本センターの事業内容は以下のように大別される。a)地域連携に基づく脳卒中・心臓病対策、患者支援b)急性期から回復期にかけてのスムーズなリハビリテーションの実施c)脳卒中・心臓病に関する適切な情報提供、相談支援d)脳卒中・心臓病等の緩和ケアe)脳卒中・心臓病等の後遺症を有する患者に対する支援f)脳卒中・心臓病等患者の治療と仕事の両立支援・就労支援g)小児期・若年期から配慮が必要な脳卒中患者の長期的支援h)地域住民を対象とした情報提供、普及啓発i)地域の医療機関、かかりつけ医を対象とした研修会、勉強会等の開催j)効率的に支援するための資材(パンフレットなど)の開発・提供まだ本センターは設立から3年目を迎えたに過ぎないが、脳卒中相談窓口では、在宅生活・介護の不安、今後のリハビリ、車の運転継続、難病申請、就労、就学支援や、再発予防のための注意点など、非常に多岐にわたる相談内容に対応している。また、症例検討会を立ち上げた他、地域の医療機関・かかりつけ医を対象とした研修会を開催し、厚生労働省から紹介された資材を用いて再発予防のために情報提供を行なっている。2022年12月、脳卒中に関する市民公開講座を開催し、地域の医療機関及びかかりつけ医を対象として、2024年1月、高次脳機能障害者の就労支援・就学支援にかかわる講演会を開催した。2024年2月には循環器病支援者研修会を、厚生労働省もやもや病研究班(主任研究者、黒田 敏)とともに、2024年3月もやもや病全国統一市民公開講座を、2024年5月もやもや病ピアサポートの会を開催するなど、徐々に活動を活発化させている。これらの活動が全国的に拡がる中で、脳卒中患者のケアには多職種間において従来以上に緊密な連携が必要であることが判明してきた。そこで、日本脳卒中学会、日本脳卒中協会、日本脳神経看護研究学会、日本ニューロサイエンス看護学会、日本医療ソーシャルワーカー協会、日本介護支援専門員協会、日本作業療法士協会、日本理学療法士協会、日本神経理学療法学会、日本言語聴覚士協会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本栄養士会の13団体によって「一般社団法人日本脳卒中医療ケア従事者連合」が2021年12月に設立された。富山県にもその支部を設置している。現在、この団体が中心となって、全国レベルで就労支援調査、就労リハビリテーション調査などを展開しており、当院もさらに充実した患者支援を目指して活動している。(黒田 敏)175第2章 医学部・附属病院 脳卒中・心臓病等総合支援センター

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