発足の経緯診療体制・業務内容 特徴・特色活動状況2020年代にはいり、肺がんの診療は大きな変革期を迎えている。抗腫瘍薬では分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害剤の使用が一般的となり、さらに新薬が次々に開発され、腫瘍の遺伝子発現や蛋白発現に応じたテーラーメード治療が始まった。外科の分野でも区域切除の予後改善効果が認められ、2cm以下の小型肺がんに関しては区域切除が標準術式になりつつある。その様な時代において、急速に複雑化していく治療体系の変化に対応していくため、各領域の専門家が知恵を出し合い、高度な最先端の医療を提供できる場を作ることを目的として、2024年1月に呼吸器・胸郭センターが開設された。目標として、治療に難渋する難治例や特殊な症例を積極的に受け入れること、漏斗胸を中心にした胸郭形成の実績を積み重ねることで、北陸地方における呼吸器・胸郭疾患治療の基幹施設を目指す。センター発足時の連携診療科は下記となる。センター長:呼吸器外科特命教授 土谷 智史副センター長:呼吸器内科准教授 猪又 峰彦近年、わが国における生命倫理に関する議論は医療の発展に伴って複雑化し、一人の医師が方針を決め判断する時代ではなくなった。多職種連携を軸に多くのスタッフの意見を集約し、自己決定権を尊重しながら家族、本人とどうあるべきかを突き詰めていかなくてはいけない。それらは現場関係者にだけ悩ませるものではなく、病院全体としての課題と考え、当院においても2018年に臨床倫理コンサルテーションチームが生まれた。院内各所で悩む事例に対し、適宜相談、検討を行い、臨床現場の一助となるべく活動を進めてきた。各診療科、中央診療施設、総合がんセンター、病棟等からの患者の診療における倫理的問題(臨床倫理)の相談に対する助言を随時行っている。2018年以降、チームとして活動してきたが、令和6年4月より院内組織として「臨床倫理室」が設置された。それぞれの人生を歩むべくご本人の自己決定を尊重し、家族支援なども含めて様々な(土谷智史)(種市尋宙) 呼吸器内科診療講師 岡澤 成祐 形成再建外科・美容外科教授 佐武 利彦 感染症科教授 山本 善裕 放射線治療科教授 齋藤 淳一発足してまだ1年経過していないが、センターは富山県における呼吸器疾患・胸郭疾患の医療の中心拠点として機能し始めている。というのも、呼吸器内科のカンファレンスに外科医が出席するようになり、目標の一つである高難度手術が増加した。また漏斗胸の患者も継続的に紹介されてきている。さらに、ToyamaRespiratoryScienceandNextInnovation研究会(T-NEXT)を既に2回開催し、最先端の刺激的な講演により呼吸器の診療、研究が活性化されている。仕事を離れれば、センターのメンバーは和気藹々と仲良く、年2回の懇親会で親密度を高めている。呼吸器・胸郭センターがこれから益々発展し、10年後、20年後の富山県、さらには北陸の呼吸器医療に貢献し続けていけるよう、全員で邁進していきたい。視点から助言することを目指し、さらに活動の強度を増すべく、新たな体制を構築し、活動を始めている。臨床倫理室は、常設的な室として、幅広く随時相談を受付している。〈臨床倫理室メンバー〉種市 尋宙(小児科)長島 久(医療安全管理部)岡澤 成祐(第一内科)柏﨑 由美(看護部)田口 幸(看護部)村崎 善之(薬剤部)温井 梢(MSW)177第2章 医学部・附属病院 呼吸器・胸郭センター 臨床倫理室
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