当院の「総合がんセンター」は2020年6月に設置された。その前身である「集学的がん診療センター」が設置されたのは2010年8月である。7つの部門が置かれ、それぞれの職責を果たすよう以下のように定められた。(1)キャンサーボード部門:キャンサーボードの運営に関すること。(2)がん緩和ケア部門:緩和医療の提供、緩和ケアチームの運営及び厚生労働省が定める緩和ケア研修会の実施・運営に関すること。(3)外来化学療法部門:外来化学療法センターの運営に関すること。(4)がん相談・地域連携部門:がん相談支援センターの運営及び地域連携に関すること。(5)がん登録部門:院内がん登録及び地域がん登録に関すること。(6)レジメン登録部門:がん化学療法レジメン登録に関すること。(7)がん診療人材育成部門:がん診療に携わる職員の教育・研修に関すること。また、2014年には(8)がん遺伝相談部門が加わった。各部門は国指定の「地域がん診療連携拠点病院」の要件を満たすために必要な事項であり、その任を担ってきた。こうした体制で約10年間当院のがん診療は支えられてきた。新たながん診療体制を目指し、集学的がん診療センターは、国の指定要件を満たすため、いわば、受動的な役割を果たす組織ともいえた。しかし、近年のがん診療はより高度に、より先進的な診療が求められており当院でもがん診療の進歩に呼応するような動きがみられた。2018年には「がんゲノム医療推進センター」、「膵臓・胆道センター」の設置、2019年には地域がん診療拠点病院(高度型)の指定を受けた。さらに2020年には「乳がん先端医療乳房再建センター」も設置し、診療科をまたいだがん診療の連携が診療の補助的部門のみならず、診療そのものへと進展した。こうした院内がん診療全体の発展の中で、全ての側面を包含するより積極的な組織の構築気運が高まった。各診療科との相談の結果、名称は「総合がんセンター」(林院長の発案)、部門を「臨床部門」と「先端医療・研究部門」に分け、さらに臨床部門は「特定診療部門」、「患者サポート部門」、「臨床支援部門」から構成された。この総合がんセンター設置時に新たな枠組みとして、「小児・AYA世代・妊孕性センター」、「頭頸部腫瘍センター」、「肉腫・希少がんセンター」が特定診療部門に、「がん・リハビリテーションセンター」が患者サポート部門に、「先端医療センター」と「がん免疫センター」が先端医療・研究部門に設置され、時代の流れに沿った様々な機能を有する、富山大学附属病院ならではの「総合がんセンター」が誕生した。2022年8月には和漢診療科の貝沼教授着任を機に「がん和漢薬治療センター」が、2023年12月には白血病を専門とする今井小児科教授着任とともに「小児腫瘍センター」も加わり、更なる充実を遂げた。さらにチーム医療を担うチーム活動も重視しており、2024年現在で「緩和ケアチーム」、「irAEチーム」、「腫瘍循環器チーム」、「薬剤性肺炎チーム」、「経口抗がん薬対策チーム」、「アピアランスケアチーム」の計6チームが多職種連携により、総合がんセンターのがん診療を支えている。2024年4月から藤井がセンター長を拝命させていただきました。組織をより効率的に運営すべく、支援部門は臨床部門へ統括し、看護部、薬剤部ともにより円滑に情報共有できる体制としました。また県内、大学附属病院内においても多く医療従事者が、当院総合がんセンターの実態を十分にご理解いただけていない実情があり、ホームページの充実、院内パンフレットの充実、Xを用いた全国への情報発信を開始しました。さらに市民公開講座での患者様への情報発信にとどまらず、県内の医療従事者に向けた講演会も予定しています。今年度からは新たな体制で、さらなる発展のために邁進して参ります。(橋本伊佐也、藤井 努)180 総合がんセンター
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