医学部50周年
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富山大学附属病院では、2016年に臨床研究管理センターが設置され、研究倫理や臨床研究におけるモニタリングなどに対応してきた。その後、2019年に2名の常勤教授が配置されたことをきっかけに、研究管理のみならず、学内の臨床研究の実施を支援・推進するための体制を強化してきた。具体的には、特定臨床研究や多施設レジストリ研究に対応するためのデータセンターの設置および電子的データ収集システム(EDC)であるREDCapの導入、特定臨床研究に対応するべくCRCやデータマネージャーの確保・配置、臨床研究支援スタッフの人材育成等から取組みを開始した。これらの取組みの結果、最近5年間で、富山大学が主機関もしくは分担機関として実施する特定臨床研究105件の支援に携わり、REDCapを用いたデータセンター支援は22件に及んだ。特記事項として、2022年には抗がん剤の副作用緩和を目的として和漢薬を用いた本学初の医師主導治験を実施し、2023年には薬学部と県内製薬企業が共同で開発した新規投与経路医薬品の第1相臨床薬理試験を実施するまでに至った。このように医薬品開発に関わる臨床試験の体制を構築してきたことで、薬剤や医療機器の開発につながり得る学内の研究シーズを臨床応用に導くことも可能ではないかという考えが芽生え、ミッション実現戦略予算を活用した「創薬・ヘルスケア事業」を立ち上げた。2023年度には6件の創薬研究シーズ、10件のヘルスケア研究シーズに対して、臨床応用への橋渡しを推進すべく支援・予算配分を行い、ヘルスケア部門からは整形外科が企業と共同開発したカスタムメイド人工骨幹が製品化・保険収載されるなど、社会実装の実績も上がりつつある。2024年には、多彩な取組みと組織の発展に対応すべく改めての体制整備を行い、同年6月より「臨床研究開発推進センター」に改組した。新センターでは中條大輔センター長、寺元剛副センター長の指揮のもと、開発研究マネジメント室(室長:岡部圭介)、臨床研究総合支援室(室長:寺元剛)、研究教育支援室(室長:寺元剛)、臨床研究データ管理室(室長:菅野亜紀)、運営管理室(室長:中條大輔)、企業治験管理室(室長:小野敦央)の6室を設けた。これらスタッフとCRC、データマネージャー、モニター、URA、事務スタッフが一丸となって、臨床研究支援、創薬・ヘルスケア事業に加え、企業治験や県内外の製薬企業等との共同研究開発・臨床試験のさらなる推進を図っており、いくつかの企業とは情報交換を始めている。また、これらの治験や臨床試験を効率化・活性化させるため、臨床研究のDX化に取組んでおり、関連課題「分散型臨床試験の実施に向けた臨床研究のデジタルトランスフォーメーション」が富山県との共同事業として採択された。本事業では、被験者データを遠隔で取得できるePRO等を活用した、がん領域での観察研究を皮切りに、デジタル技術を用いた種々の臨床試験に対応できる体制を構築していく。今後も、学内外の医師・研究者をはじめとする医療従事者の皆様、県内外の医療機関や企業の皆様の期待に応えられるような臨床研究、開発研究に関する取り組みを展開し、富山及び北陸の医療の発展に貢献できるよう邁進していく所存である。(中條大輔、寺元 剛)181第2章 医学部・附属病院 臨床研究開発推進センター

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