当講座は、富山県における小児医療等の提供体制を検討する「富山県小児医療等提供体制検討会」の中間とりまとめにおいて、発達障害や虐待によるトラウマ、さらにそれによる二次障害など、発達やこころの問題に悩む子どもに対する医療体制が十分ではない現状を踏まえ、こどものこころと発達に関する専門家(児童精神科医ならびに小児科医)の育成と、既存の富山県リハビリテーション病院・こども支援センターなど専門的機関と地域の医療機関が連携し、継続的に診療できるシステムを体系化し構築する方向性が示されたことを受け、令和4年6月1日に富山県が富山大学に設置した寄附講座です。富山県におけるこどものこころや発達診療の実態を踏まえ、当講座は以下の①~⑥の目的の実現を目指し活動をおこなっています:① こどものこころと発達診療の専門医(児童精神科医ならびに小児科医)を、医学部神経精神医学講座ならびに小児科学講座と共同して育成する。②こどものこころと発達診療に従事するメディカルスタッフを育成する。③富山県内の医療機関(クリニックや市中病院)の小児科医・精神科医におけるこどものこころと発達診療に関するプライマリケアのスキルアップに努める。④富山県内のこどものこころと発達診療に関わる医療機関等の連携強化に努める。⑤富山県におけるこどものこころと発達診療の拠点の一つとして、専門的医療を担う。⑥児童青年精神医学、小児神経発達学等の研究を推進する。目的①については、1)医学科生に対して、講義や臨床実習を通してこどものこころの発達過程や問題を理解し、こどものこころと発達診療の基礎を習得するよう指導すること、2)精神科ならびに小児科専攻医に対して、附属病院神経精神科ならびに小児発達神経科と共同して、臨床研修を通してこどものこころと発達診療に関するプライマリケアのスキルを身につけるように指導すること、そして3)こどものこころと発達診療の専門医を目指す専攻医等に対して、十分な経験を積むことのできる専門的研修による指導を行っています。令和5年4月1日には子どものこころ専門医機構に「富山県子どものこころ専門医研修施設群」が認定されました。現在、精神科または小児科のサブスペシャリティーとして専攻医を受け入れ、子どものこころ専門医の育成を行っています。目的②については、附属病院神経精神科ならびに小児発達神経科と共同して、臨床研修を通してこどものこころと発達診療に携わるメディカルスタッフのスキルアップ、院内カンファンレスなどを行っています。目的③~④については、富山県及び北陸地方における児童青年の精神保健(メンタルヘルス)の普及発展に資することを目的とし、小児科医や精神科だけでなく心理士・看護師・教師・養護教諭等の学校教育関係者・児童福祉関係者などのあらゆる分野の専門家が集まり児童青年の精神保健について検討を行う「富山児童青年精神保健懇話会」を設立し、地域連携やプライマリケアスタッフのスキルアップの場として活動しています。目的⑤については、0から15歳までのこどものこころや発達に関わる様々な問題に対して専門的な加療を行っています。目的⑥については、富山大学医学部神経精神医学講座、近畿大学医学部精神神経科、国立国際医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、等との共同研究を行っています。最後に、当講座の富山県における子どものこころの専門医育成の方針を示しました。切れ目のないキャリア・サポートと生涯にわたるスキルアップのサポートを通じ、こどものこころと発達診療に携わる医師の育成を目指しています。(辻井農亜)183第2章 医学部・附属病院 こどものこころと発達診療学講座
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