医学部50周年
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講座構成員 教育活動 研究活動 左からYoung特命助教、田村教授、北村技術職員、西森事務補佐員 本講座の前身である富山医科薬科大学・医学部・第二生理学講座の小野武年教授の後任として、平成17年4月に私、田村了以が教授に就任し、講座名も現在の統合神経科学となった。同年10月に県内3大学の再編統合により富山大学が発足したが、当時、講座スタッフは、永福智志(助教授)、上野照子(助手)、TranHaiAn(助手)、北村貴志(技術系職員)、西森美穂(事務補佐員)であった。その後Tranがベトナムへ帰国後に杉森道也(助教)、永福が福島県立医科大学に転出後に内山久美子(助手)、内山久美子が退職後に中島敏(准教授)が着任した。その間、間祐太郎、中田龍三郎、浅野昂志が研究員として、また海外からは、MikeSmith(北米ペンシルバニア州立大学)、LiCongde(中国三峡大学)が外国人客員研究員として在籍した。令和2年3月に上野が退職し、令和3年8月からMeganElizabethYoung(特命助教)を迎えた。その後、令和5年3月に中島と杉森がそれそれ近畿大学と富山県立大学に転出し、現在はYoung、北村、西森、私の4名体制となっている。これまで修士課程の大学院生として小座野紘子、また博士課程の大学院生として小座野紘子、内山久美子、永尾薫、ShaoQian、三原美晴が在籍した。さらに、WoomiYangとChoiJae-Gyun(ともに韓国忠南大学医学校・修士課程の学生)を特別研究生、住田爽、中川結理、丸谷昴生、冨田耀太郎、深谷憲利、小熊裕太郎を研究医養成プログラムの学生として受け入れてきた。 学部教育では、医学部医学科の学生を対象とした生理学の系統講義と実習、基礎配属、早期基礎臨床体験実習、薬学部の薬学科と創薬科学科の学生を対象とした生理学の講義を担当してきた。大学院教育では、博士課程専攻者へは細胞システム生理学特論、生体恒常生理学特論、感覚認知システム情報特論、侵襲的脳活動計測実習、異分野体験実習等を、また、医科学修士課程専攻者へは人体機能学や臨床行動科学の講義を担当しててきた。この間、講義に関しては「わかりやすさ」と「アップデートな内容」を主眼に教材や講義方法の改善を積み重ね、また、実習に関しては学生自らが手を動かし能動的に学習する態度を涵養することを心がけて教育してきた。さらにコロナ禍を契機としてオンデマンド教材とオンライン講義の充実を図ってきた。 本講座では私の教授就任当初から一貫して電気生理学的手法と行動学的手法を駆使し、霊長類動物(サル)の海馬とその関連脳領域による記憶形成保持の神経基盤に関する研究を継続してきた。その結果、サル歯状回における誘発電位記録法を確立し、世界に先駆けて霊長類海馬歯状回におけるinvivoの長期増強誘導に成功した。また、ポリソムノグラフィーモニター下で睡眠中のサルの海馬から神経活動を記録する実験システムを開発し、多くの非霊長類動物種で周期性徐波が出現するとされるレム睡眠中でさえ、サル海馬では持続的かつ明瞭な周期性徐波は出現しない一方、サルでも他の動物種と同様に海馬CA1領域でノンレム睡眠時に鋭波・リップルが出現し、同時にニューロン活動が増加することを明らかにした。さらに、直線走路や複雑な構造を持つ3次元的環境内を移動中のサルの海馬からニューロン活動を記録し、明瞭な場所応答を示す海馬ニューロンが存在することや、それら海馬ニューロンのスパイク発火列に徐波帯域での有意な持続性振動が観察されないことなどを明らかにした。これらの研究より、霊長類の海馬での情報符号化原理には動物種を超えた普遍的な要素と霊長類に固有の要素が存在することが分かってきた。今後は、内嗅皮質など海馬と密接な投射関係を有する脳領域を研究対象とし、霊長類の記憶形成保持の神経基盤のシステム的理解を深めていく所存である。(田村了以)59第2章 医学部・附属病院 統合神経科学講座

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