これまでの病態・病理学講座の歴史の中で、講座初代教授、小泉富美朝(1977年)に続き、笹原正清が第二代教授として着任(1999年)した。その間に、石澤伸准教授(2010年転出)、石井陽子助教(2011年准教授に昇任)、尾矢剛助教(2008年転出)、倉茂洋一教務職員(2007年助手昇任)、松島貴子技官、當波雅子秘書、艾米熱古力沙比提研究員(2007年転出)、小林紗綾香技術補佐員(2008年転出)の陣容で、人体病理を大切にし、同時にそこで帰納された概念を実験により実証するという基本姿勢を貫いて病理学の教育・研究・診断に注力した。その後、濱島丈が助教(2008年)、申杰が助教(2011年、2013年帰国)、山本誠士が助教(2013年)、藤川美和が技術補佐員(2008年)にそれぞれ着任した。医学部40周年記念誌発刊以来、医学部50周年記念誌発刊に至るまでの10年、笹原正清教授の退官と特別研究教授就任(2022年)、石井陽子准教授の栄転(2017年)、山本誠士の准教授昇任(2023年)およびラボヘッドの役割(2022年)、濱島丈助教の栄転(2024年)、奥野のり子の助教着任(2018年)、山内直岳の医員着任(2020年)と転出(2022年)、倉茂洋一助手の退官(2020年)、松島貴子技官の退官(2022年)、藤川美和の助手昇任(2020年)、国沢智巳の技官着任(2022年)、江尻暁里の技術補佐員着任(2023年)、當波雅子秘書の変わらぬ支援など、講座の転機や体制の移行があった。学部教育では、バーチャルスライドシステムでの病理学および臓器別教育を実施に注力し、教員と学生との双方向講義についてMoodleを用いた資料配布、実習レポートの作成と提出等を実施した。医学部生の研究室配属では、毎年6名程度の学生の研究指導を行い、その中の20%程度が研究医養成プログラムに移行し、研究の継続を行った。研究医養成プログラム修了生の中には、山田萌が第108回日本病理学会総会で優秀演題賞を受賞(2019年)し、松田未央が第111回日本病理学会総会で優秀演題賞を受賞(2022年)している。大学院教育では、主に修士課程、博士課程の講義を担当し、血管や中枢神経系の研究内容について、講義に出席した大学院生と知識共有を図った。また、生命融合のカリキュラムについて、講義や実習を通じて多くの大学院生とdiscussionを行った。さらに、学内の生命融合シンポジウム(2023年)のオーガナイザーとして会の進行などに貢献してきた。診断業務では、学内外の病理解剖と、外科および生検材料の病理診断を実施した。その中で、奥野のり子助教を中心とし、呼吸器カンファレンスと脳外科カンファレンスを新たに立ち上げ、継続して院内貢献している。さらに、第60回北陸脳腫瘍懇話会(2024年)の世話人を奥野のり子助教が担当し、総勢60名強の参加者があり、盛会のうちに閉会となった。また、濱島丈助教が分子病理専門医を取得したことから、院内のエキスパートパネルの立ち上げに貢献した。研究活動では、血小板由来増殖因子シグナル研究を主軸として、中枢神経系、血管系さらに肺、腎臓、皮膚組織の病態形成について血小板由来増殖因子受容体ノックアウトマウスを使用し、多くの有用な発見を行った。これらの研究には、大学院生であった北原英幸、林智秀、吉田尚史、桑洋、NguyenVanDe、古川健一朗、NguyenQuangLinh、下川一生、林政雄、DangSonTung、高島侑美など医師や歯科医師および留学生がこの10年間に参画し、さらに新規病態増悪分子の特定やsingle-cellRNA-seqなどの新規技術の導入に繋がっている。また、これらの研究成果は、PNAS、Cell Reports、EBioMedicine、Angiogenesisなどのトップジャーナルに掲載された。そして、血小板由米増殖因子シグナル研究の集大成として、笹原正清特別研究教授が第105回日本病理学会総会(2016年)で栄誉ある宿題報告を行った。現在は、山本誠士、奥野のり子、藤川美和、国沢智巳、江尻暁里、當波雅子の講座スタッフと笹原正清特別研究教授の支援で講座運営、教育、診療業務に対応している。また、LeThiThuTrang、PhamVanThinh、井波綾香の大学院生3名、加藤陽成、根津真奈実の学部生2名とともに、鋭意研究を推進している。以上、2016年~2024年の講座の沿革を概観した。 (山本誠士、髙田尚良) 63第2章 医学部・附属病院 病態・病理学講座
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