的クラスター創成事業「ほくりく健康創造クラスター」の研究テーマの一つとして「個の免疫医療の基盤開発」を当講座が担当しました。この研究では、感染症やがん治療に重要な役割を持つ抗原特異的なTリンパ球を迅速に検出し、単一細胞から抗原受容体(TCR)遺伝子を解析・取得すること、および取得したTCR遺伝子を患者のT細胞に発現させ、感染した細胞やがん細胞を傷害(攻撃)して治療するシステムを開発することを目的として研究開発が行われました。その結果、多くのウイルスやがん抗原特異的なTCR遺伝子の取得に成功しています。このシステムでは、抗原特異的TCRの同定・機能解析を世界最速の10日間で行うことができることから、我々はこのシステムをhTEC10(humanTCRefficientcloningwithin10days)と命名しました。この研究成果は、NatureMedicine(2013)に掲載され世界の注目を集めました。さらにこの研究成果がきっかけとなり、本学内講座との共同研究が9報、他大学・研究機関との共同研究が14報、海外との共同研究が4報の学術論文を発表することができました。また、ISAAC法やhTEC10法を融合させ、T細胞の新たな活性化機構(T細胞Cis相互作用)を発見し、この成果はNatureBiomedicalEngineering(2022)に掲載されています。これらの研究は、文科省科学研究費、日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代がん医療創生プログラム事業」や「先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業」の研究費で支援されています。免疫学講座は、これまでの実績を基盤に、学内外との共同研究を進展させることにより、「地域と世界で活躍できる医師」を養成する場として、さらなる発展を目指します。(小林栄治)免疫学講座は「細菌・免疫学講座」の改組により開設された講座であり、改組前の細菌・免疫学講座は昭和51年4月に開設されています。平成3年から村口篤先生が第2代教授として赴任され、平成29年までの約25年にわたり当講座を主宰され、多大な貢献をされています。平成30年11月より岸裕幸先生が第3代教授に就任され、講座の発展に尽力されました。その後、令和6年4月より小林栄治が第4代教授に就任し、免疫学講座を主宰しています。平成23年以降、大学院生として、津田玲奈(第一内科)、朴秀虹、奥村麻衣子(第一内科)、下岡清美、祐川健太(第二外科)、山口智史(第一内科)、森田恵子(産婦人科)、中村知子(眼科学)、川高正聖(第一内科)らが本学の当講座で研究を修了しています。また他大学からも中河秀俊(金大消化器内科)、玉井利克(金大消化器内科)、さらに海外からも呂福蓮(中国)、HATHIVIETMY(ベトナム)、AbdulHayee(パキスタン)の3名の留学生を受け入れてきました。また、学部学生の鬼塚志乃、吉野佳佑、長谷川傑、髙橋祐亮、旭和将、小西正晃、松浦史華らは研究医養成プログラムを修了しており、令和6年7月現在も3名の学生を受け入れています。このように免疫学講座では国内外を問わず免疫学を学びたい学生に対し、広く開かれた学びの場を提供しています。講座の最近の主要な研究テーマは、リンパ球チップを活用したトランスレーショナル研究であり、平成15年から19年まで、文科省知的クラスター創成事業「とやま医薬バイオクラスター」の研究テーマ「免疫機能を活用した診断治療システムの開発」を当講座が担当しました。リンパ球チップの開発は、富山県工業技術センター、リッチェル、日立ソフト等との産学官連携事業として推進されました。また、リンパ球チップを応用し、ヒト末梢血リンパ球から、ヒトモノクローナル抗体を7日間で作製する画期的なシステムであるISAAC(Immunospotarrayassayonachip)法を、世界で初めて開発しました。このシステムを応用して、B型肝炎ウイルスやインフルエンザウイルスに対する中和抗体を迅速に作製しました。これらの研究成果は「世界最速のヒト抗体作製技術」として、NatureMedicine(2009)に掲載されました。さらに、平成20年から24年まで、文科省知64 免疫学講座
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