講座沿革教育について研究について本講座は、昭和52年4月に富山医科薬科大学医学部薬理学講座として中西頴央教授のもとに開講された。中西教授時代の教室の研究テーマは「アルコールおよびアセトアルデヒドの薬理作用」についてであり、アルコール嗜好性や耐性発現と肝あるいは脳内のALDHなどの酵素との関係、アルコールとアセトアルデヒドの細胞膜電流に及ぼす作用などの研究が進められた。中西教授は平成4年8月に副学長に就任され、その後平成5年11月に武田龍司教授が2代目講座主任として着任された。武田教授は、「呼吸中枢回路の神経薬理学」をメインテーマとし、呼吸器系の薬理学に新しい光を当てた研究が行われた。平成17年3月に武田教授が退官され、平成17年7月に服部裕一教授が3代目講座主任として着任された。服部教授は「敗血症をはじめとする全身性炎症症候群とそれに付随する合併症の分子病態生理と治療戦略」を主たるテーマとして、薬理学的視点を生かした様々な研究を行われた。その間、平成17年10月の3大学統合に伴い、富山大学医学部になる際に、講座名が現在の分子医科薬理学講座に変更となった。平成31年3月に服部教授が退官された後、中川崇が令和元年10月に富山大学医学部病態代謝解析学講座から4代目の講座主任として着任した。令和6年7月現在、夜久圭介講師、内田仁司助教、水谷天音助教、MariamKarim特命助教の4名の教室スタッフと12名の大学院生、医学科学生とともに薬理学教育、ならびに老化の分子メカニズムに関する研究を推進している。教育においては、医学部医学科、看護学科における薬理学教育を主に担当し、医師、看護師・保健師の育成に貢献している。さらに、大学院においても医科学修士課程、看護学修士課程、医学系博士課程の薬理学、臨床薬理学の講義を担当してきた。令和6年度現在の当講座の主担当科目は医学科2年「薬理学」(34回)、医学科4年「臨床薬理,EBMと医療」(8回)、看護学科「薬理学」(15回)、医科学修士課程「病態薬理学序論・特論」(16回)、看護学修士課程「臨床薬理学」(15回)、医学系博士課程「先端薬理学特論」(15回)となっており、その他富山県立大学看護学部の「薬理学」(15回)も担当している。大学院生の指導では、令和元年10月の中川の着任以降、修士課程学生1名、博士課程学生5名が学位を修得しており、現在5名の博士課程大学院生が在籍している。また医学科学生については、研究医養成プログラムにおいて指導した4名がプログラムを修了・卒業し、7名が現在在籍中である。本講座での研究のメインテーマは「代謝からみた老化制御機構の解明」であり、薬理学的手法のみならず、生化学・分子生物学的手法やメタボロミクスなどの最新の技術を取り入れながら研究を行っている。特に補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に着目し、NAD+代謝の破綻がどのように老化と関わっているのか、さまざまなNAD+代謝酵素の遺伝子改変マウスを用いて解析している。また、老化関連疾患との関わりを中心に、NAD+代謝を標的とした創薬研究についても進行中である。さらに、NAD+前駆体を用いた臨床試験も実施するなど、医学部のメリットを活かした基礎研究、橋渡し研究を行っている。また、メタボロミクスを中心に学内や国内・国外の研究室との共同研究も積極的に行っている。これら研究成果は令和元年10月以降、NatureCommunication誌などのハイインパクトジャーナルに英語原著論文24報、英語総説5報などを発表するとともに、科研費基盤BやAMED-PRIMEなどの大型研究費も獲得している。2023年12月には本講座が主幹となり、富山で第43回トリプトファン研究会を主催するなどした。(中川 崇)66 分子医科薬理学講座
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