医学部50周年
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富山大学・医学教育学講座は2021年4月に初代教授が着任し、正式な社会医学系講座として生まれ変わりました。現代の卒前医学教育は国際情勢も含めて目まぐるしく変化をしています。特に新型コロナウイルスパンデミックではこれまで当たり前であった講義、基礎医学実習、臨床実習が全くできないという状況に陥りました。結果としてWeb配信を利用したライブ授業、オンデマンド授業、オンライン実習など新しい学修方略が生まれるなどの劇的な進化が起こり、LearningManagingSystem(LMS)の活用など医学部における教育場面は5年前と劇的に変わったと言えます。また、昨今の学生は入学時からパソコンだけではなく、スマホやタブレット端末を駆使して授業に臨んでいる状況で、キャンパスのネット環境の充実や教員も学生のニーズに合った教育手法の改善の必要があります。また、人工知能の普及により、学生が提出してくるレポートなどの吟味も大きく変化しています。われわれ教員が学生として学んでいた時代とは社会が求める医師像も学修方略も、そして、学生の評価方法までも当時には想像できないような変化をしています。これらの変化に柔軟に対応しながらも富山大学医学部の伝統を守り、新たなものを導入しつつ、教育の質をしっかりと担保すべく講座として日々活動をしています。実際の業務としては学務課、医師キャリアパス創造センター、医療人教育室、北越地域医療人養成センターと連携して様々な教育に係る活動をしています。医学部教育の質を審査している世界医学教育連盟(WFME)による国際分野別認証への対応により本学の卒業生が米国をはじめとする海外の医師資格試験を受験できるようにカリキュラムを整備しています。他にも各教室での教育や学修者評価への助言、個々の学生のキャリア相談対応などを行っています。近年、医師法改正に合わせて医学生が医行為を実施することが法的にも認められました。そのため、4年次生は臨床実習に進むためには大学間共用試験実施評価機構(CATO)による共用試験という知識試験と実技試験に合格しなくてはならなくなりました。この試験の実施公的化(事実上の国家試験化)による試験運営が最も大きな仕事になってきています。その厳密な実施を細心の注意を払いながら行っています。また、同窓生の皆さんにとっては懐かしい教育も続けています。1年次生に対する伝統の立山研修を含む医療学入門、臨床医学統合や医療プロフェッショナリズムなどの学問領域を横断する授業を担当しています。研究においては大学院生2名を受け入れ、医療者教育に関わる社会医学研究などの学術的な活動も積極的に行い、論文を出しています。我々の研究は医療者教育に関わることであり、卒前教育、卒後教育(初期臨床研修や専門研修、生涯教育)、多職種に関わる教育もすべて含んでおりますので診療科を超えて、年齢を超えて、大学内外を超えて大学院生として受け入れる準備ができています。もし、学位取得や医療者教育研究に興味がある方はご相談いただけると嬉しく思います。ここ最近の他大学に注目されている活動では長期地域滞在型プライマリ・ケア実習という国際的には継続的統合臨床実習(LongitudinalIntegratedClerkships)として知られる臨床実習を日本で3番目に導入し、毎年20人の学生が地域に12週間にわたって滞在しながらプライマリ・ケアを学ぶカリキュラムを運営しています。このカリキュラムが20人もの規模で実施できているのは日本では富山大学が唯一です。このような世界の先端を行く教育もどんどん取り入れていく所存です。これからの時代は学生に教える…のではなく、学生の自己主導型の学びを支援することが重要になってきます。そのような学修支援を学生に対してのみならず、教育を担当している教員の方、地域の皆さんに対しても講座員一同、全面的にしていこうと考えています。これまでの富山大学の50年の教育の積み重ねを意識しながら次の50年の礎を作っていきたいと思っております。(高村昭輝)70 医学教育学講座

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