医学部50周年
85/268

研究 教育 臨床臨床心理学・認知神経科学講座は2021年4月に新たに開設されました。当講座は、国内では珍しく医学部医学科に配置される心理学講座です。富山大学医学部における心理学教室の沿革は古く、その歴史は心理学教室が医学部のなかの教養講座として存在していた時代まで遡ります。神経精神医学講座から独立された松井三枝先生(当時准教授、現金沢大学教授)による時代が最も長く、心理学教室における研究は医学研究と融合するかたちで発展を遂げました。当講座はこれまでの心理学教室と同様に、神経心理学の基盤を踏襲しつつ、構造および機能神経イメージングを用いた認知神経科学を扱っています。健常者からうつ病や不安障害などの精神障害患者まで幅広い範囲のヒトを対象とし、神経イメージングに加え、免疫炎症・内分泌指標およびDNAを含めた包括的アプローチのもと、人のこころの統合的理解を目指しています。より具体的には、注意や記憶、思考を含む認知メカニズムの検討、また認知の偏りにより特徴づけられる精神障害に対する予防・治療アプローチの開発・評価を行っています。国立精神・神経医療研究センターや北里大学、京都大学などをはじめとする研究機関と共同して、研究活動を進めています。世界医学教育連盟による国際医学教育基準の医学教育プログラムでは心理学や行動科学といった学問の修得が求められていることから、当講座では医学科必修科目である「概説医療心理学」や「行動科学」などを担当する他、1年生の「早期臨床基礎実習」、3年生の「基礎配属」、4年生の「医療プロフェッショナリズム」などの講義・実習を担当しています。大学院(博士前期および後期課程)では医薬理工学環認知・情動脳科学プログラムや総合医薬学研究科先端医科学専攻等で研究指導を行っています。講義としては、「臨床行動科学序論」、「臨床行動科学特論」、「認知行動生理学特論」、「生物学的精神医学特論」、「臨床心理学・認知神経科学特論」などを担当しています。また心理専門職として公認心理師が2017年に国家資格として制定されたことに伴い、2022年度に本学の人文学部において公認心理師養成カリキュラムが立ち上がりましたが、この実習も担当しています。講義・実習科目として、学部「心理実習」、「人体の構造と機能及び疾病」、大学院「心理実践実習B」、「保健医療分野に関する理論と支援の展開Ⅰ」および「保健医療分野に関する理論と支援の展開Ⅱ」などがあります。当講座では、認知行動療法(CBT)を中心とした心理臨床活動の推進も行っています。最近では当講座教員(袴田)がCBTの創始者の一人であるアーロン・ベック博士が設立したアメリカ合衆国・ベックCBT研究所により、「CertifiedClinician」(十分な臨床経験のもとでCBTの厳しい基礎訓練を修了し、さまざまな心理的障害を治療できることを示す信頼ある国際的な臨床資格)として認定されました。CertifiedClinicianは現在世界に100名ほどおり日本からは初めての登録となりました。(袴田優子)71第2章 医学部・附属病院 臨床心理学・認知神経科学講座

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る