医学部50周年
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内科学(第一)講座は昭和51年に矢野三郎初代教授により開講された。担当領域は糖尿病代謝・内分泌、呼吸器、リウマチ・膠原病疾患である。平成4年からは小林正2代目教授、平成19年からは戸邉一之3代目教授が着任し発展を遂げた。最近の10年間を振り返ると平成29年に林龍二が富山大学附属病院臨床腫瘍部教授に就任し、平成30年に薄井勲が獨協医科大学病院内分泌代謝内科教授として赴任した。また、令和4年に八木邦公が金沢医科大学附属病院総合内科学生活習慣病センター教授として赴任した。教育面では「全身を診る内科診療」を掲げ、医学部コアカリキュラムでは将来の内科医育成を念頭に内科診療の魅力を伝えるべく学生教育に取り組み、臨床実習では診療方針に関するディスカッションへの参加、受け持ち患者に関するプレゼンテーションなどを通した指導を行った。初期研修医教育においては複数年度に渡り「富山大学附属病院研修医が選ぶベスト指導医賞」受賞者を輩出し2名が殿堂入りした。内科専攻医に対しては初年度に各診療グループでのローテート体制をとっており、その後の学外研修ではこれまでに17名が専門的な経験を積み診療や研究に成果を上げた。糖尿病代謝・内分泌グループでは、糖尿病に関するゲノムワイドスタディ、また長寿遺伝子であるSirt1に着目した各疾患領域(糖尿病、気管支喘息、間質性肺炎、転移性肺腫瘍)における解析により数々の成果を上げた。また薄井、藤坂らは脂肪組織におけるマクロファージの機能に関する研究で成果を上げ(平成22年日本糖尿病学会リリー賞[薄井]、平成24年日本糖尿病学会、日本内分泌学会の若手研究奨励賞[瀧川])、その後藤坂らの研究グループは腸内細菌叢と肥満に関する研究を行い現在当科の研究活動を主導する立場となっている(令和2年日本糖尿病学会リリー賞[藤坂]など)。角らのグループは代謝性疾患・腫瘍性疾患における免疫細胞の機能に関する研究を立ち上げ、また令和元年には国立国際医療センターより富山大学附属病院臨床研究管理センター中條教授を迎え、1型糖尿病に関する医師主導治験等、臨床研究にも活動の範囲を拡げた。呼吸器グループでは肺癌・胸部悪性腫瘍、IgG4関連疾患・びまん性肺疾患を主要な研究テーマとした。肺癌分野では猪又を中心に本学病理診断学講座や当講座糖尿病代謝・内分泌グループとの共同研究から分子標的薬治療効果及び腫瘍免疫に関する研究成果を報告した。また富山県内各関連病院との共同研究体制を構築し肺癌希少疾患(肺肉腫様癌)のデータベース作成をはじめとした複数の臨床研究を行い、さらに北日本肺癌臨床研究グループでは代表機関として多施設共同研究を実施した。松井、岡澤らはIgG4関連疾患、サルコイドーシス、間質性肺炎、自己免疫疾患などの領域で数々の多施設共同研究や厚生労働省事業より国際学会、論文にて研究成果を報告した。リウマチ・膠原病グループでは、多喜、篠田、朴木らを中心に稀少・難治症例に関する多くの英文症例報告を行ってきた。免疫学講座との共同研究では、奥村は精製した抗Ro52抗体と膠原病関連肺疾患との関連を研究し、山口は腫瘍浸潤リンパ球TCRの網羅的解析手法を樹立し、川高は抗CCP抗体可変領域の糖鎖と関節炎増悪の関連を明らかにし、それぞれが成果を上げた。以上、内科学(第一)講座では糖尿病代謝・内分泌、呼吸器、リウマチ・膠原病各領域における臨床医及び研究者の育成を通して、富山県における医療体制の充足と、研究活動を通した医療の改善と発展に尽力している。(藤坂志帆、猪又峰彦、山口智史、加藤 将)73第2章 医学部・附属病院 内科学(第一)講座

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