医学部50周年
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内科学第三講座は、1979年(昭和54年)に開講し、佐々木博先生が初代教授として着任された。診療領域としては消化器と血液を担当し、研究については肝臓の免疫電顕、肝線維化などを中心とした研究が進められ、1991年には第23回日本臨床電子顕微鏡学会、第26回日本肝臓学会西部会が富山で開催された。1989年には第2代教授として同じく肝臓を専門とする渡辺明治先生が着任され、肝性脳症、肝疾患の栄養、肝疾患の免疫学的検討、肝線維化と肝再生などをテーマとした研究が行われ、1999年に第33回日本肝臓学会西部会、2003年に第6回日本病態栄養学会年次学術集会を開催されている。2004年には第3代教授として杉山敏郎先生が着任され、H. pyloriや消化管間質腫瘍(GIST)に関する研究などが推し進められた。杉山先生は2015年に日本ヘリコバクター学会理事長に就任し、2011年には富山で第17回日本ヘリコバクター学会学術集会が開催された。また、2006年には田中三千雄先生(第三内科助教授→看護学科教授・光学医療診療部長)が札幌において第72回日本消化器内視鏡学会(DDW-Japan)を開催している。2018年に安田一朗が第4代教授として着任したが、その教授選考の前に血液内科の新設が決まり、血液内科が分離・独立した。安田の専門は膵・胆道疾患の内視鏡診断・治療であり、特に総胆管結石の内視鏡治療や内視鏡的胆道ドレナージ、超音波内視鏡下針生検(EUS-FNA)およびこれを応用した治療手技の日本への導入・普及に尽力してきた。当時北陸には膵臓・胆道の専門医が不在の状況であったが、第二外科の藤井努教授とともに膵臓・胆道センターを立ち上げ、診療・研究レベルを全国トップクラスの水準に引き上げた。また、全国から多くの若手医師が国内留学に訪れ(長崎大学、大阪医科薬科大学、三重大学、大分大学、阪和住吉病院、大阪市立総合医療センター)、海外からも多数の医師が研修に訪れている。2022年には安田が日本胆道学会理事長に就任し、学会事務局が富山大学第三内科内に置かれ、また、2023年には日本消化器内視鏡学会理事、日本消化器病学会監事に就任し、第113回日本消化器内視鏡学会総会を2027年に富山市で開催することが決定している。さらに、2023年には北陸で遅れていた炎症性腸疾患診療のテコ入れのために炎症性腸疾患内科を新設し、初代教授として渡辺憲治先生が着任した。現在の診療・研究体制は、膵臓・胆道チーム、腫瘍チーム、肝臓チーム、消化管チームの4チームから成るが、主な研究テーマを以下に挙げる。【膵臓・胆道】膵・胆道疾患の内視鏡診断・治療に関する臨床研究を推し進めるとともに、国内外の施設との多施設共同研究にも数多く参画し、膵・胆道癌の早期診断バイオマーカーの開発も行っている。【腫瘍】JCOG、WJOGといった本邦を代表する臨床試験グループの臨床試験や新薬の開発治験に参画するとともに、自施設主導の臨床研究も推し進め、胃癌患者における胃粘膜の様々な遺伝子のDNAメチル化について前向きの大規模臨床試験(AMED研究)が進行中である。【肝臓】肝炎、肝不全、肝癌、薬物性肝障害などの免疫学的検討を行い、免疫細胞解析技術の開発と肝疾患への応用を行ってきた。現在は、B型肝炎、肝硬変などの病態解析について基礎的検討を行っている。【消化管】内視鏡治療法の工夫と有効性・安全性に関する自施設・多施設共同研究、消化管出血の疫学に関する研究、最近では内視鏡に搭載してリアルタイムに動作可能な内視鏡治療・検査を支援する人工知能(AI)を自作開発している。(安田一朗)75第2章 医学部・附属病院 内科学(第三)講座

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