教室内沿革研究活動当教室は、1979年(昭和54年)富山医科薬科大学附属病院の開院と同時に開講し、諸橋正昭が初代皮膚科教授に就任しました。その後、2005年(平成17年)に富山医科薬科大学が富山大学・高岡短期大学と再編・統合し、同年10月1日に清水忠道が2代目皮膚科教授に就任しました。当初は、医局員の開業や関連病院への就職、初期研修医制度開始の影響もあり医局員数が少なく人材確保に苦慮しましたが、清水教授の采配と10名程の医局員の奮闘により、当科の病院経営に対する貢献度は2005年以降、飛躍的に伸びています。現在、当教室では10名の皮膚科専門医が中心となり、アトピー性皮膚炎や乾癬などアレルギー疾患を始めとして、膠原病、天疱瘡などの自己免疫性疾患、先天性皮膚疾患、各種皮膚悪性腫瘍や熱傷など様々な疾患の診療を行っております。さらにレーザー専門医、熱傷専門医、臨床遺伝専門医、がん治療認定医を有する医師が複数在籍しており、その専門性を生かす皮膚外科外来、レーザー外来、アトピー外来、白斑・脱毛外来、褥瘡外来の専門外来を開設しています。特にレーザー外来では、アレキサンドライトレーザー、色素レーザー、スキャナー搭載型CO2レーザー、エキシマレーザーを常備しており、県内外から多数の患者が受診しています。また、皮膚外科外来ではダーモスコピーや超音波検査を駆使した術前診断、センチネルリンパ節生検の導入、新潟県立がんセンターへの国内留学による手術技術の向上により良好な手術結果が得られており、手術件数も年々増えています。さらに重症のアトピー性皮膚炎や乾癬に対するバイオ製剤やJAK阻害薬による治療、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた悪性黒色腫の治療にも積極的に取り組んでいます。また、本学の特徴の一つである漢方治療に関しても、和漢診療科や和漢医薬学総合研究所と連携した協力体制を整えています。当教室では、教室の責務である社会還元の一つとして、経験した貴重な症例を積極的に英文論文化し、世界に発信しています。中でも、国際的な認知度は低かった、ホタルイカの生食で生じる旋尾線虫幼虫移行症のLancet誌への啓蒙的な発信や(Lancet2014)、軽症の骨髄性プロトポルフィリン症の発症機序を解明し「不完全型赤芽球性プロトポルフィリン症」という新しい疾患概念の提唱(BrJDermatol2016)などは社会的意義の高いものと考えています。炎症性サイトカインの一つであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)とそのホモログであるD-dopachrometautomerase(D-DT)の機能解明を中心に、アレルギー・炎症や光老化・光発癌の新たな機序を解明してきました(JInvestDermatol2011,FASEBJ2016,FASEBJ2021)。また、アトピー性皮膚炎の原因遺伝子であるfilaggrinとその関連分子に着目し、表皮角化細胞の分化機序と疾患形成への関与の解明にも取り組んでいます(BBRC2013,CellDeathDis2014,CellDeathDiscov2020,ExpDermatol2024)。さらに、エコチル調査と協力し乳児血管腫の有病率やリスク因子に関する臨床研究も行っています(JInvestDermatol2021)。人事(平成17年以降)教授:清水忠道(平成17年~)准教授:牧野輝彦(平成23年~)講師:牧野輝彦(平成18年~23年)、乗杉理(平成24年~26年)、三澤恵(平成25年~)、松井恒太郎(平成26年~29年)。(清水忠道)77第2章 医学部・附属病院 皮膚科学講座
元のページ ../index.html#91